とにかくくさいどろっとした黒い液体

@zoe

第1話

それは宇宙からやってきた

てのひらに乗るくらいのちいさい球

外はつるつるのピカピカ

でも、ただそれだけ


公園の砂場にそれは落ちていた

それを見つけた少年は

たいせつに持ち帰った


最初は

てのひらの上でころころ

それだけで楽しい

ころころころころ

ただの思いつきだった


ぐっと手で押さえたまま

ぐりっとひねってみた


すると

パカっとあいた

ふたつにわれたのだ


中からは

ちょうど上半分がとれて

下半分に

とてもくさい黒いものが入っていた


「うわ、くさ」

少年は立ち上がる

そのくささ少年の両親も

少年の部屋にやってきた

「おい、なにくさ」

「ちょっと、これくさ」


両親は

少年の手から球をとろうとする

少年は取られまいと必死だ

すると

そのとてもくさいどろっとした

黒い液体がお父さんのくちの中へ

すこしだけ飛んだ


「う、うまい」

ものすごいうまさ

ちからみなぎるかんじ

人生でも一位かも、お父さんは思う


お父さんは

そのくさい黒い液体をつかった

ソースがのったパンケーキを開発

自分の店で出したら、行列ができるほどの

ひとが集まった


どうも

同じような球が各地で発見されており

お父さんはその買付に忙しい


その三ヶ月後


ひとびとは

なぞの病気に苦しむ

とはいっても

植物の病気

どんどん枯れる

それも食物に関連するものばかり


そんな時

宇宙からの使者が来た

「植物が枯れてませんか?」

不穏な病気がひろがっているの知って

来てくれたのだ

「間に合わないかと思って

先に送っておいたんですけど」

それは

ちいさな球の中に

黒い液体が入ったものだと

「あれを水でうすめてまいてもらうと

効果あるんです」


「送った分で、この星全体をカバーできる

と思うのですが」


「それと、あれで在庫が最後なので

注意してつかってもらえれば」


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