つれづれナゴヤ譚

まさ

第1話 ナゴヤとラジオ

会社の都合でこの夏二か月間名古屋で生活することになった。


まずは往路をいかに充実した時間に出来るかが勝負。

出発前日の私はあれこれ考えた。


そうは言っても、新横浜~名古屋間の新幹線なんてたかが1時間30分程度。大層なことが出来るわけではない。


というわけで、ラジオを聞くことにした。



最近、radikoというアプリで追っかけ視聴をするのにはまっている。


せっかくの1.5時間。

普段時間が取れない分、尺が長めの番組でも聴いて名古屋に向かおう。


我ながら中々の名案だとホクホクしつつ、当日を迎えた。


当日、予定通り新幹線に乗り込むとすぐにradikoを開いた。


旅のお供に選んだのは、『JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD』。


相変わらずくだらなくて、面白い。



「何でその話題で20分ももつんだよ」

と突っ込みたくなるようなオープニングトークから、

チョコチョコ挟まるリスナーからのお便り、

ただただ日村(さん)を笑わせるだけの企画。


ずーっと、ゆるい。

で、面白い。


新幹線に揺られている間、ずっと心地いいゆるさに包まれていた。

時間的にも、名古屋に着く頃にちょうど終わるはず。


ラジオ、大正解だった。


昨日の自分、よくやった。

そう自分を労い始めた時、


突然、radikoが落ちた。


普段電車とかで聴くときもたまにあるので、

取りあえずイヤホンを外して『バナナムーン』の画面に戻す。


が、やはり聴くことが出来ない。


radikoだけ壊れるなんてことは考えにくい。


「あともう少しだったのに・・・」

「もう着いちゃうじゃん・・・」


頭の中でブーたれたその時、車内アナウンスが名古屋まであと約10分であることを告げた。


そして、気付いた。


「着きそう」だから、落ちたのだ。


名古屋では『バナナムーン』の電波をキャッチできないという、ただそれだけのことだった。


まさかラジオに到着の合図をもらうとは。


私は一人笑いそうになった。

笑いをこらえながら、自分のゆるさになぜか安心した。


私はそっとイヤホンを外して、おもむろにカバンにしまった。


それから間もなく、新幹線は名古屋駅に滑り込んだ。


人生初の名古屋は、雨が降っていた。

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