オンブズゥーマン、助けて~!

紫 李鳥

第1話

 


 西に酔っ払いの口喧嘩あれば、仲裁し、東に痴話喧嘩ちわげんかあれば、仲良くさせる。日本全国のもめ事を瞬時に解決する、怪傑かいけつウーマン。はたしてその正体は?


 僕らのヒロイン、オンブズゥーマン!


 金太郎ヘアのオンブズゥーマンは、赤ちゃん人形をおんぶしたイカれたおばちゃん。けど、けど、正義の味方。スーパーマンのように空を飛び、日本全国の困った人を助けるのら~。




「おぎゃ~! おぎゃ~!」


「ヘイ、ベビー、泣くんじゃねぇ。オッパイやっからさ」


 オンブズゥーマンは、泣き声内蔵の赤ちゃん人形に、後ろ向きでおもちゃの哺乳瓶をくわえさせる。


 ブシュッ!


 見事、人形の口に命中。哺乳瓶をくわえた人形、泣き止む。



 真っ赤なマントを翻して、オンブズゥーマンは今日も行く。


 ピカッ! ピカッ!


 オンブズゥーマンが首にぶら下げた[助けて探知機]が、悲鳴をキャッチして点滅。


『ちょっと、何すんのよっ! どすけべ。キャー! オンブズゥーマン、助けてー』


「よっしゃ! 待ってちょー」


 東京の空を巡回中のオンブズゥーマンは滑空すると、




 渋谷の09の裏に2秒で到着。そこにいたのは、茶髪ウェブのかわい子ちゃんにモーションをかけているオヤジ。


 ドッスン!


 オンブズゥーマンの着陸音に振り向くオヤジ。途端、


 バシッ! バシッ!


 オンブズゥーマンは、キックボクシングの技をご披露。


「わ~い、オンブズゥーマンだ~。キャッキャッ」


 かわい子ちゃんの黄色い歓声。


「イエ~イ」


 親指を立てて、ウインクで応えるオンブズゥーマン。一方、膝蹴りされたオヤジのほうはヨロヨロ。


 グサッ!


 みぞおちにとどめの一発を食らって、オヤジ、ダウン。あっという間のアクションQで、オヤジ、声を発する暇なし。


 オンブズゥーマン、かわい子ちゃんの手を掴む。


「さあ、カモン」


「オンブズゥーマンさん、ありがと~」


「どういたしまして。それより早く逃げて」


「ん。チュッ!」


 かわい子ちゃん、オンブズゥーマンの、おてもやんほっぺにキス。しかし、オンブズゥーマンのほっぺたは赤いので、かわい子ちゃんのキスマークが目立たない。ん~~~、残念!


 振り向きながら手を振り、走り去るかわい子ちゃん。オンブズゥーマン、ニッとすると、両手を上げて、ビルの隙間から、


 シュワッチ!


 星空に飛び立った。そして、また巡回するのら~。




 ♪

 オンブズゥーマン

 オンブズゥーマン


 人形おんぶした

 オンブズゥーマン


 デブっちょウーマン

 ウーマンパワー


 オンブズゥーマン

 オンブズゥーマン


 強きをくじき

 弱きを助く


 オンブズゥーマン

 オンブズゥーマン


 ぼくらのヒロイン

 わてらのハロウィン


 ちゃうちゃうヒロイン


 オンブズゥーマン

 オンブズゥーマン




 ピカッ! ピカッ!


『キャーッ! 何すんねん、この、エロおやじ。ちょっと、ちょっと、ちょっと。キャー! オンブズゥーマン、助けてなー』


 大阪弁の悲鳴をキャッチ。


「待っててほい。すぐ行くで」


 感化されやすいオンブズゥーマン、大阪弁でしゃべり、道頓堀に直行。

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