第7話 騙し討ち!~母親に変装する霊~



この話はわたしが実際に体験した話です。



まだ実家に住んでいた頃。

あれは地面がゆらゆら揺れて見えるような、8月の真夏日でした。


暑さと喉の乾きで、意識が朦朧としながら帰宅しました。

とにかくヘトヘトで、もう何をする気力も残っていませんでした。


実家はマンションでオートロックが付いています。

オートロックはガラスの扉で、ほんの5歩先ほどにエレベーターがあるため、扉の向こうからもエレベーターの中が見えますし、逆もしかりでした。


わたしは前屈みのような姿勢でエレベーターに乗り込みました。


「○○、○○。(わたしのニックネーム)」


名前を呼ばれた方向を見ると、オートロックの扉の向こうに、白いTシャツを着た母が立っていました。


この時、あまりにもヘトヘトで顔は見ませんでしたが、わたしを○○というニックネームで呼ぶのは母しかいませんし、声音から母だと判断しました。


買い物の帰りかな。一緒にエレベーターで上に行きたいんだろうな。


そう思いましたが、とにかくヘトヘトだったわたしはエレベーターの扉を閉めました。

母には悪いですが、聞こえなかった振りをして先に行こうと思ったのです。

なので母の顔を見ませんでした。


自宅へ入ると、母がリビングでテレビを見ていました。母は青色のワンピースを着ていました。


わたしは今、下で母に会った旨を話すと、お互いに凍りついてしまいました。


あれ以来、同じ出来事はありませんが、あの時オートロックの扉を開けていたらどうなっただろうと、今でも思います。


これからちょうど、その季節がやって来ます。

皆さんもどうか、お気をつけて。



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