第14話 クジビキ
サボってた訳ではなかった。
社用車でガンガンエアコンを効かし、お気に入りのMUSICを聴きながら、上司の注意電話を頭ごなしに聞いていた。
左耳から右耳へと流していた。
あたまん中は、草原を駆け巡り、海辺をバギーで乗り回し、大都会の雑踏の中を高級車で流しまくっていた。
「ん?何か轢いた?」
車を降り、後ろ左タイヤをよく見てみる。
「濡れている…」
潮の香りと昆布が溝に詰まっている。
「あれ?草もたくさん溝に詰まっているな」
車に戻り、爆睡する。電話が何度も来るが携帯電話を窓から捨てる。
車のハンドルやギアを自分が触ってもいないのに、自然と風景がさっき見たのと同じになる。高揚感が高まって行く。やがて車は見たことのないほど立派なタワーマンションの地下駐車場へと入って行く。自然とエレベーターに乗り、指紋認証ドアを開け一室へ入る。
「おかえりなさい!」
そこには信じられないほどの美人な女が居た。
「お仕事お疲れさま」
「ああ」
夢か現実か分からないまま、風呂に入り飯を食って寝る。
今日も又社用車でうたた寝する。
「何か轢いたな」
バックミラー越し赤い回転ランプが見える。
「きっと 夢さ」
カレハ ツイニ ゲンジツヲ ヒイテシマッタ クジビキの結果。
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