真白さんは逆ハ―を望んでおりません。
しりうすさん
第1話 コンビニ店長の記憶 二階堂君①
どうも 僕は都内最東部のしがないコンビニ店長をしているものです。
日々生きるのが精いっぱいの50半ばのおっさんです。
働き過ぎて、趣味は労働、特技は労働 、労働にまみれております。
ところで、最近うちの店に超大型新人が入ってきたんです。
二階堂紳一郎君 ピチピチの高校一年生。
この新人めっちゃシュッとしいる。
いつも寝起きのまんまのヨレヨレジャージで来店するオバはんが二階堂君が来てから小奇麗な格好で来店するようになったし、僕には虫けらを見るような目をしてすれ違いざま舌打ちしていたOLが二階堂には恋する乙女のような目をして 「お仕事がんばってぇ」とか応援とかする。
二階堂君がレジに入っていると二階堂君に接客してもらおうと女どもが並び、僕が「次の方どうぞコチラにどうぞ」と言っても 聞こえないふりをする。
世の中はイケメンに優しく、おっさん・ブサメンには厳しく出来ているんだなぁ。
二階堂君はこんな冴えないおっさんの僕にも店長として大変敬意を払ってくれる。
指示にはちゃんと従うし、僕の業務が少しでも軽くなるように心を配ってくれる。
高1なのに なんでそんなに人間出来てるの?高1なのに独り暮らししているとか。
親御さんどんな調教したらこんな子供出来るの?
おっさんでも君の事好きになっちゃうよ?というような二階堂君。
ああ、君といつまでも一緒に働いていたい。そんなことを思っていたある日 二階堂君は不穏なことを言い出した。
「今はブラザーマートの方が女子には人気があるんですかね。」
うちはトリプルセブン一応業界最大手コンビニなのだが、再近隣コンビニがブラザーマートだ。
「? ぶ・・ぶブラザーマートは、まあ、いいコンビニだけどトリプルセブンの方が評価高いよね。」
「ええ、俺もそう思ってここでバイトしています。でも・・。」
「でも?」
「ブラザーマート派はトリプルセブンには来ないのかなと。」
コンビニによって限定商品があるのは事実。コンビニヘビーユーザーとは親戚以上に顔を合わすのも事実。
二階堂君が申し訳なさそうな顔をして僕に言う。
「ブラザーマートに転職しようかと・・」
「!!! な・・・なんでっ!!!!」
二階堂君がいなくなったら、うちの店に来ている女どももみんなブラザーマート行っちゃうし、なにより僕が寂しい!
「時・・時給だったら、みんなに内緒で上げちゃうヨ」
おどけて言ってみる。
「そういう不公平は良くないですよ店長。」
「やややや・・・いやいやいや・・・良くないから ちゃんと話そう。僕の悪いところは直すから!」
思わずなんか別れ話を持ちかけられた女みたいになっちゃう50半ばの僕。
「・・・・来ないんですよね。家から一番近いコンビニのはずなのに。彼女。」
二階堂君は寂しそうに呟く。
「1カ月間働いたけど、一度もこのコンビニには現れなかった。彼女はブラザーマート派なのかもしれない。」
「彼女?二階堂君の彼女?」
「彼女ではなくて好きな女の子です。」
ちょっと照れながら二階堂君が答える。
ということは、二階堂君がここで働く理由は好きな女の子が来店する可能性が高いという理由だったらしい。
二階堂君ほどシュッとした爽やかイケメンなら、ガツンと行けばOKもらえるだろうに。今流行りの草食系なのか。
そんなことより、辞められるのは非常に困る。
「二階堂君のシフト時間には来ていないだけじゃないかな。どんな子?おしえて」
ほぼ24時間常駐している僕だったら分かるかもしれない。
「長い黒髪で 肌が白くて ちょっと背が高くて 清楚で優雅で 例えるなら女神っぽい子です。」
「・・・女神!?」
いつの間に足軽区に女神降臨してたんだ。
「来てませんか?」
真剣な眼差しを向けて来る。
こんな都内最東部の貧民足軽区の底辺コンビニに女神降臨。ありえない。
でもでも僕の幸せを失うわけにはいかない。二階堂君がいなくなっちゃう。記憶の糸を辿れ。
「・・・あっ!」
僕の脳裏に「キレイナコ イタヨネ・・」という声とともに光が差した。
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