“人間”対“魔物”、開戦
カーナの街の入り口まできた。
入り口……カーナの街は他の街と比べて大きい街らしく、大きな門と鎧を着た2人の男たちが立っていた。
「「ひぃっ……」」
その門番は俺を見た瞬間情けない悲鳴をあげて腰を抜かしていたが。
「大丈夫です。このドラゴンは属性竜ですので意思の疎通もできますし、味方ですので」
「そ、そうですか……」
「それより入ってもいいでしょうか」
「……はい。Sランクのメルテーナ様ですね。問題ありません」
「ありがとうございます」
メルテーナがカードのようなものを見せ、それを確認した門番はそう言った。
「カルディア様。すぐに説明をして戻ってきますのでここで待っていただいていいでしょうか」
いきなり街にドラゴンが現れたら間違いなくパニックが起こるだろうしな。
『ああ。大丈夫だ』
「私も一緒に残るわ」
リスアも一緒に残ってくれるそうだ。
メルテーナは「すぐに戻ります」と言って街の中へと入っていった。
……門番よ、そこまで怯えなくともいいんじゃないか?
+++++++++++++++
メルテーナが街の中に入っていってからしばらくして。
待っている間は暇だったのでリスアと話しながら時間を潰していると前に森であった男がこちらにすごい顔とスピードで走ってくるのが見えた。
そんな顔で走ってこられたら怖いんだが……。
「カルディア殿!“
『あ、ああ……』
「そうか!本当に助かった!!」
前世を思い返してもここまでの勢いで話かけられたのは初めてだな……。
「改めて。俺はカーナ支部の冒険者ギルドのギルドマスターをしている“ガルム”だ」
『カルディアだ』
「協力、本当に感謝する。カーナの森の規模で……なおかつ“悪魔”による人為的な可能性のなる魔物の侵攻だ……。正直どのぐらいのものかもわからんから戦力は多い方がいい」
『喜んでもらえてなによりだ。条件だがーー』
「そこにいる女の保護……だろう?問題ない」
『そうか。では俺もできる限りの力を貸そう」
「本当に助かる……っ」
なんだこの男。切迫つまったような……すごい焦り?いや、緊張している感じだな。
「普通の魔物の侵攻でさえ大きな被害をもたらすものなのに“悪魔”の手が加わっている可能性があるのです。ギルドマスターも緊張しますよ」
なるほど。
「魔物たちはおそらく明日にでも進軍してくる可能性が高い。この街にも依頼という形で冒険者たちを集めている。この後Sランク以上の冒険者とAランクパーティーリーダーを集めて作戦会議をする予定だ。カルディア殿も参加してくれ」
『わかった』
大丈夫だろうか?またあの赤髪のように攻撃してくる冒険者がいそうだな。
会議は俺がいるのと、集まる冒険者も多いためギルドの屋外訓練場でやるらしい。そんなものがあるんだな。
街の中だったが、外側で冒険者には荒くれ者も多く冒険者以外の人通りがすくないらしくあまり人とはすれ違わなかった。
まぁ、すれ違った冒険者たちも腰を抜かしている者も多かったが。
「諸君、まずは集まってくれたことに感謝する。俺はこの支部のギルドマスターを務めているガルムだ」
「おい、ギルドマスターさんよ。それよりこのドラゴンはどういうことだ?」
やはりいたあのときの赤髪野郎がそう言った。
俺を気に入らなそうな目で見てるな。お前から襲ってきておいて返り討ちにあった挙句逆恨みか?
ただ、他の冒険者たちも疑問に思っていたのか賛同するようにうなずく。
「今回の“魔物の侵攻”の殲滅作戦に協力してくれるカルディア殿だ」
『カルディアだ。よろしく頼む』
ちなみに俺はいまガルムの隣に座っている。
「トカゲごときが人間の作戦に協力できるのかァ?」
『トカゲ以下の知能と実力の赤猿がなにかようか?』
「てっめぇ……!」
「やめろアルト」
「チッ……」
いちいち突っかかってくる野郎だな。沸点の低さも相変わらずだ。
ガルムが一言言っただけで引いたが。
「もうすでに知っている者が多いと思うが、“
聞いて驚きを隠さず騒めくやつらもいたがガルムが手を掲げると静かになった。
「悪魔の操る魔物の大軍はまさしく統率された“軍”だ。規模も並み半端のものではないだろうから気を引き締めてくれ」
ここにくるまでに今集まった冒険者たちは依頼で外からきた者たちが多いと聞いていたが、やはり冒険者。起きているものの危険性を考え静かに話を聞いている。
「Aランク以下の冒険者、およびパーティーはそれぞれ後衛組と前衛組にわかれてもらう。後衛組は後ろから魔法による殲滅と前衛組のサポートを。前衛組は最前線での魔物の殲滅と後衛組に魔物を通さないようにしてくれ」
冒険者たちはもちろん“軍”ではない。
普段から連携をとるような訓練をしているわけでもないし、それぞれの我が強いやつらが多い。
細かい作戦や連携を行おうとしても到底無理なので作戦と言ってもこのような大雑把なもので終わることが多いのだとか。
「Sランク以上のやつらとカルディア殿は遊撃だ。それぞれの動きやすいように魔物の殲滅。Aランク以下のやつらでは手に負えない魔物の討伐を行なってくれ」
Sランク以上の冒険者はまさしく人外。AランクとSランクとでは大きな壁があり比べ物にならないぐらい強いため作戦などで縛るよりも“遊撃”というかたちで運用するそうだ。
「Aランク以下の冒険者たちは受付にて細かい配置や作戦を聞いた後、他のパーティーなどと打ち合わせるなどしてくれ。Sランク以上はそれぞれ好きにしてもらって構わない」
冒険者もSランク以上になると実力と権利がついて回るのである程度やりたいようにやっていいんだな。ギルドとしても手綱をとろうとはしていないようだし。
「では解散。各々明日に向けて準備を整えてくれ」
ガルムもその言葉で会議は解散となった。
作戦通達みたいなもので、その作戦についても大雑把すぎて会議とは呼べないと思うが。
しかし、解散になったからと言って魔物の俺が街を歩き回るわけにもいかないしな。
ガルムに聞いてみるか。
『ガルム、俺はこの後どうしたらいい?』
「そうだな……森に戻るのは危険だろうし、けど街には場所はないし……」
『ここでいいならここで寝泊りするが?』
「いいのか?」
『普段は洞窟の空洞で寝てるんだ、変わらん』
「……そうか。苦労かけてすまない」
そういったあとガルムも訓練場から出ていった。
ギルドマスターだからあいつもいろいろ忙しいいんだろう。
『リスアはどうする?』
「私も今日はここで寝るわ」
『大丈夫なのか?』
「カルディアも言ったでしょ?いつもと変わらないわ」
『そうか』
「明日はここの領主の屋敷に居させてくれるみたい。領主だから守りも固いだろうし街の中では1番安全だって」
『そうか。リスアも気をつけてな』
「カルディアもね」
日が暮れるまでリスアとたわいもない話をして暇を潰したあと、訓練場で夜を明かした。
+++++++++++++++
「じゃあ、気をつけてね」
『ああ。リスアもな』
翌日
領主の屋敷に行くというリスアを見送ったあと、俺も冒険者たちが魔物を迎え撃つために集まっている街の門からすこし離れた平原へと移動した。
もうすでに多くの冒険者がそれぞれの配置につき待機している。
冒険者たちの後方にいるガルムが話し始めた。
「斥候によって情報が入った。魔物の数はおよそ5万以上。統率をとってこちらに進軍中。およそ2時間ほどて見えるぐらいに接近するそうだ」
5万という数字を聞いてあたりがうるさくなる。
「だが、所詮多くがDランク程度の軍!それに多くのSランク以上の冒険者たちもついている!!俺らに負けはない!!」
『『『『オオォォォォォォォォッ!!!!』』』』
ガルムが鼓舞するようにそう言い、それに答えて冒険者たちも雄叫びを上げた。
Sランク以上の冒険者とは昨日会いにきた奴らとは顔を合わせている。
同じ戦場にでて戦うのだからとか、普通に興味があったとかで会いにきたやつは多かった。
魔力を見るにやはり強いやつが多かった。
俺……属性幼竜はSランク。
だが人間とは魔力の量、体の作りからして違う。たとえランクが同じSでも俺のほうが強く、3人いたSSでも俺と同じぐらいのやつが1人だけだったな。
そして2時間がたった。
目の前にはもはや地面すら見えないような魔物の大軍が。
「これより!“
ガルムの宣言により、冒険者たちが攻撃をしかける。
ーー“人間”対“魔物”
戦いの火蓋はいま、切って落とされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます