第28話 二つ名襲名の儀を始めたいと思います
大広間は大勢の人間で溢れかえっていた。
近隣の貴族達も駆けつけ、歌にダンスに大盛り上がり。
魅夜はというと、
「……なんか気まずいなぁ…」
と気にしながらも、用意してあった料理を次から次へと食べてゆく。
そしてケイスケはというと、やって来た貴族の女性達と盛り上がっていた。
「あれ??魅夜は着替えなかったの??」
ようやくミオ達がやって来た。煌びやかな衣装に身を包みながらも肝心なところは露出しており、魅夜はみんなの綺麗な姿に見惚れた。
「…ま…馬子にも衣装だな」
「ふーん今鼻の下伸ばしてたくせに」
「伸ばしてねーよ」
「ほらほら見てー大好きなおっぱいだよー♪」
ミオはこぼれそうなおっぱいを両手で持ち上げ魅夜へと迫った。
「やめろって、揉みしだくぞッ」
「いーよー魅夜なら♪」
「あ、ウチのも揉んどく??」
「いらねーよッ」
「…テオのは――」
「もってねーだろ」
「がーん」
そんな魅夜たちのもとにシルフィーナがやって来た。シルフィーナも普段より豪華で、そしてちょっぴりセクシーな衣装で現れた。
「今日は存分に楽しんでくださいね」
「…ほー…さすが王族のおっぱいは違うな」
「………ギロッ」
かりんが鋭い目で魅夜を睨んだ。
「あんまり見ないでください…恥ずかしい……」
「と言う割にはノリノリで着てたよね?」
と響がツッコんだ。
「私たちちょっと女王様にご挨拶してくるから、まだドレスのお礼言ってないからさッ」
そう言ってかりんたちは女王の元へ急いだ。
かりんたちが離れてからそう間をおかず魅夜の周りがガヤガヤしだした。
「あの方がそうらしいわよ」
「可愛らしいお顔してらっしゃる♪」
「私話しかけてこようかしら」
「勇者様より強いらしいわよ」
と言う声が聞こえてきて、魅夜は誰のことかなと見渡した。
すると突然数人の女性たちが魅夜を取り囲んだ。
「おわッなっなんだ!?」
「あなたが魅夜様でいらっしゃいますか!?」
「英雄譚をお聞かせください!」
「意中のお相手はいらっしゃるのですか!?」
「よろしかったらわたくしのダンスのお相手を――」
等など矢継ぎ早に声を浴びせてくる。それを聞いた他の女性たちも、
「あの方がそうらしいわよ」
「わたくしもお話に加えてください」
というなりさらに周りに加わってきた。
ケイスケはそれを横目で睨みまたも不満をつのらせていった。
「あの…魅夜様、お耳にはさんだのですが、その……おっぱいがお好きとのことで……」
「えっ!?誰がそんな事をッ!?」
「いえ、さっきのやり取りが聞こえていたものですから……」
「あー……あれは身内との冗談というか…」
「わたくしのでよろしかった…どうですか??」
「………なにが??」
「…わたくしの…おっぱいでよかったら揉んでいただいても…構いませんが…」
そう言って女性の1人が胸を突き出してきた。
「ちょっとッ抜け駆けはダメですわ!魅夜様、わたくし形には自信がありますの。よろしければこちらを」
横にいた女性も胸を突き出してくる。
(何コレどういう状況??)
と何かにツッコんでみるもののどうにかなる訳もなく、魅夜が戸惑っている間にも次から次へとおっぱいの群れが魅夜に押し寄せてきた。
「ちょっとー私の魅夜に何するんですかッ!」
と女の群れを引き裂いて入ってきたのはミオだった。
「魅夜は私の胸しか揉まないんですッ!やめてくださいッ」
「いや、お前の胸も揉んだことないが」
女性の群れを「シャーッ!」と言いながらミオは追い払った。
「そんな追い払わなくても…」
「いーえ!ダメです!目離すとすぐおっぱい揉みに行くんだから!」
「俺が変態みたいじゃないか」
「魅夜は変態です!」
「おいやめろ」
「何まだおっぱいの話やってるの??」
ちょうどそこに響達もやって来た。
「どんだけ好きなのよ…」
とかりんは呆れているものの、自分の胸を見て魅夜を上目遣いで見つめた。
「もうその話はいっての。それより飯食おうぜ!」
と魅夜はまたご馳走を食べ始めた。
「お母様、そろそろ…」
「そうね、始めましょうか」
アナスタシアが合図を出すと会場は暗くなり、アナスタシアだけが光に照らされた。
「お越しくださいました皆様、お楽しみ頂けてますか?これより二つ名襲名の儀を始めたいと思います」
その言葉と共に今度は魅夜が照らされた。
突然のことに魅夜は手にしたチキンを口に咥えながら固まった。
「…えなに?」
魅夜は何故自分がクローズアップされているか分からず、だがチキンだけはひとかじりした。
「もうご存知だと思いますが、七瀬魅夜様はさまざまな苦難の中、娘シルフィーナを助け、この国までも逆賊やモンスターの手から守ってくれました。その栄光を称え、その身に二つ名を与える。魅夜様、前へ」
魅夜はいまだに状況を理解出来ず、動けずにいた。そこへシルフィーナの侍女がやってきて、魅夜を促した。
「魅夜様、どうぞ女王様のもとへ」
「お?お、おぉ…」
ようやく魅夜が歩き出した時、周りからは魅夜を称える拍手が巻き起こった。
その中を通り魅夜はアナスタシアの前まで進みでる。
「魅夜様、数々の功績を称え、そなたに【拳豪】の称号を与える」
そう言ってアナスタシアは侍女から儀式用の剣を貰い魅夜の前まで来ると、両手で頭上に掲げたあと、右の肩、左の肩を剣の面でポンッポンッとした。
(なんだ??身体が熱い……力が溢れてくるようだ)
「ふふっどうですか?何か変化はありまして?」
アナスタシアはニコッとした。
「なんか…身体が熱くて…力が漲ってくるような…」
「それは良かった。【二つ名】とは単なる称号ではありません。その魂に刻み込み、その者に力を与える。と言っても物理的に与えるものではなく、能力を解放する――と言うような意味ですが」
「…すげぇ……すげぇよ二つ名…ッ!」
「喜んでもらえて何より。これはシルフィーナたっての希望ですから」
「ちょ…ちょっとお母様ッ!」
「あらあら顔を真っ赤にして、そんなシルフィーナ見たことないわ」
「も…もうッ」
といいながら魅夜をチラッとみたが、魅夜はといえば溢れる力に感動しまくりでまるで話を聞いていなかった。
「シルフィーナ、前途多難ね」
「………はい…」
とシルフィーナは少し落ち込んだ。
「ちょっと待てよッ!」
そんな空気をぶち壊したのはケイスケだった。
「なんだよそれ!だったら俺にも二つ名くれよ!」
とすごい剣幕でアナスタシアのもとへ凄んでくる。
「俺だって言われた魔物倒してきたんだ!苦労して倒してきたってのに俺にはなんもなしなのかッ!?」
「またアイツ…ッ!」
響は明らかな苛立ちを見せた。
「…それはちょっと出来かねます」
アナスタシアは少し考えて返答を出した。
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