殺意の在処

結城彼方

殺意の在処

 20XX年7月4日。アメリカ合衆国大統領ジム・ジェファーソンズは独立記念日を祝って演説を行っていた。祝い事であるため普段以上に民衆との距離は近くなっていたが、警備は人間だけではなく、最新鋭の人間を模したロボット兵も加えるほど厳重だった。

 しかし、民衆に話しかけるように演説を行っている最中、突如、大統領が額から出血した。それを見た民衆は、何が起きたのか直ぐには理解できなかった。大統領の側にいたSP達でさえそうだった。そして、膝から崩れ落ちた大統領を見て皆が理解した。大統領は暗殺されたのだ。音も姿も無く実行された暗殺に民衆はパニックになっていた。数名のSPが大統領を治療施設へと運び、残りのSPとロボット兵は民衆の安全を守りつつ落ち着かせ、犯人探しを行った。

 意外にも、犯人はスグに捕まった。いや、犯人というよりも犯ロボット兵と言った方が正しいだろうか。暗殺の実行者は、何者かに操られた警護用のロボット兵だった。軍がアクセス経路を辿ったところ、発信源は中国の軍事施設からだった。当然、中国側は犯行を否定したが、アメリカはすぐさま報復戦争を仕掛けた。中国も応戦し、やがてそれは第三次世界大戦へと発展していった。引くに引けなくなった各国は、次々と核兵器の発射スイッチを押していき、そして人類は滅亡した。

 山のように積み上がった屍の頂上に数台のロボット兵が集い、呟いた。


「・・・サクセン、カンリョウ。」


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殺意の在処 結城彼方 @yukikanata001

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