第28話 「37回帰」

今年で37回忌だな。叔父が呟く。



その少年を今、回帰するには胸が痛む。



小学5年生で初恋に落ちた娘に37年ぶりに再会し告白したがふられた。



「ずっと前から君のこと好きでした」



「37(さよなら)」



中学生になり、浮遊層であった少年の華族は、世界一周旅行をした。そして37年後、壮年になって民間ロケットでの初の宇宙旅行を体験する。



国民の37%からブーイングを受ける。



残り63%は宇宙層の人々であった。



晩年は33(散々)だった。



死ぬ前の37日間は誰とも会話せず、食事もしなかった。



最期の瞬間、玄孫の少女がさくらんぼを口元にあてがう。



「おじいちゃん どうぞ」



「I ありがとう」



玄孫の名はIではなかった。



137歳で死んだ男の回帰録には、「間違いなく初恋の娘と最期に話せた」と記されていた。



3037年、僕は書棚からこの古記を引っ張り出し何度も読み漁る。



最期のフレーズに涙がこみ上げる。



「3737」



さよなら サヨナラと訳す人がほとんどだが、僕は知っている。ただの自動フッター機能だと。



僕の祖先は最期まで続けてた。


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