WWW -World Wide War-(仮)

荘園 友希

序章

人のつながりって何だろう。

お金。体。場所。

不安定なところで会い、どこか不安定なところを彷徨う。

昔の人間は人に生まれ、人につながり、場所に根付くといった。

街に広がる景色は人につながれてできているとも言える。

そう、私たちは不安定なところで出会い。私たちは戦った。

日々は私たちの思惑とは裏腹に残酷にも時間が過ぎ去っていく。

私たちはどこにお金にも場所にも属さないいわば”異人的”存在だった。

 1999年、インターネット黎明期にはPCを用いて人は自分を発信していたが、その存在はだんだんと、変わっていき時代は受け身になっていった。私たちは膨大な情報量の中で生きている。バイトとかギガとかそういった情報ではない。そう一部の有名なYou tuberがいて、それに金魚のフンみたいに沢山の人がくっついている。あたかも自分が情報を作っているかのようにTwitterをして、人は情報に埋もれる。

wwwは私たちに優しくて、それでいて時に冷酷で残酷だ。私は人とネットで出会い、ネットに溺れた。

 2011年私たちは大変な災害に見舞われた。誰もが目を背けたがるその光景は今でも私の記憶に焼き付いている。テレビの前では毎日のように映る津波。毎日のように起きる余震に私は自分の部屋で、膝を抱えながら怯え、毎日を耐え抜いていた。地獄のような日本に私が求めていたのはぬくもりだった。誰でもいい、どこでもいい、誰か私を温めてくれないだろうか。そう思っておもむろに手にしたのはガラケーからいつの間にか進化したスマートフォンだった。

 いろいろなアプリを通じて私はいろいろな人に出会った。Δはアメリカの出身で、とても明るい男の子だった。日本語が饒舌で、私なんかよりもよっぽど日本語がうまかった。震災のことを自分のことかのように、毎日励ましてくれて、アメリカから日本のみんなにメッセージもくれた。部屋の隅で震えているだけの私にはすごくうれしくて、毎日のように会話をした。Twitterで並行してほかの人ともしゃべっていたけれど、私を温かくしてくれるのはΔだけだった。ψとはTwitterで出会った。自殺願望が強い女の子だったけれど、私はΔに救われた経験を誰かに尽くしたくて、ψを毎日のように慰めた。死にたい、死にたいと口に出せば死ぬことを考えてばっかだったし。学校の友達にも止められたけど、でもψを守れるのは私だけだと思ってたし、事実ψには友達というものがいなかった。中国の日本人学校でいじめられているψ。そもそもどうして中国で日本語なんて学んでいるんだろう。きっと両親のうちどちらかが、日本人で日本に行く機会があるだろうと日本語を学ばせているんだろう。日本人学校の子は中国の普通の学校の子たちに比べて裕福だと聞いたことがある。裕福な子は、お金でなんでも解決してしまう節がある。それゆえに友達とのつながりがひどく細くて、貧困を理由にいじめられる子は少ないからいじめはあまり起きにくいという。でも実際には常に誰かを標的にしたいじめが常習化しているのだという。ψはそんないじめられっ子の一人で友達がいなくて苦しんでいるという。私はΔに慰められて、私はψを慰める。私は中間を取り持つような役割で、私は情報をもらい、情報を提供した。需要供給から考えればそれだけで十分なのだけれど、でもどこか私の心の中は満たされないでいた。Δにそのことを話すと日本語を話すアメリカ人なんてほとんどいないらしく。いじめられることなんて、よくあるって言ってた。でも、忘れてはいけないのは常に愛国心で、日本は好きだけれどアメリカは捨てることのできないいわば呪いのようなものだといった。ψにその話をすると、ψは少し立ち直って、頑張るといった。しかし、一か月も経つと段々と言葉が減り、会話を交わすことも減った。最後には”さよなら”と一言残してψは連絡を絶った。きっと死んだのだろうとΔは言ったが、私はそんな歳で死んでしまうことが信じられなかった。

 Δとはその後も連絡を取り合っていたけれど、会おうと言われたことから私はなんか冷めてしまった。ネットの世界だからつながりたい。という割り切りがあったのだと思う。その後私はTwitterを消したし、誰とも話さない日々を数か月過ごした。余震が起きなくなって数か月が経つ。膝を抱えて余震を恐れていた私も、幾分精神的に安定してきたように思える。φと会ったのはそんな少し雲が高くなった、そんな頃だった。φは学校の子で、自己を持たない子だった。どこか中性的で、時々女の子らしい笑顔で笑う男の子だった。φは体が弱いことから、保健室登校が多くて、私たちは保健室で友情を深め、毎日のように話し合った。

「なんで保健室に毎日来てくれるの?」

「それは君がいるからだよ」

「もしかして僕に気があるの?僕はそんなに魅力的ではないよ」

「そういうことじゃないの、でも私は君と話していて楽しいし、毎日保健室の先生とも話せるし、ほかの子たちとも話せるから楽しくて来てるの」

「なんか変な感じがするよ」

φはいつもそうだった。どこかそうやって自己肯定欲のない。そんな子だった。

そんなφとは学校で本当の自分を話せる唯一の友人だった気がする。

 クラスに戻ると誰もがスマホをもって、ゲームだったりネットだったりを楽しんでいる。私が偶然にも出会ってしまったのは友人の影響もあったかもしれない。UVチャットといういかにも怪しいチャットルームだった。トーカとシータと知り合ったのはそこで、女の子同士の私たちはすぐに仲良くなって、授業中も放課後も、私たちは話していた。太陽が強く照り、空が高い、そんな時期だった。

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