恋愛ゲーム

「もしかして、初めて?」


 優しく押し倒されたベッドの上。

少し震える身体。

真上から見下ろされた視線から逸らし、キュッと強く目をつぶった。

そして、恥ずかしそうに言った。


「……うん。初めてだよ」


「そっか。大丈夫、優しくするから」


 そして、彼は深く甘いキスをした。

彼女が飲み込んだ言葉も知らずに。


(あんたとはねっ!)



「えぇ! うっそ、もう落としたの?」


 次の日の午後。

大学のカフェテリア。

あたしは友人2人とテラス席にいた。


「当たり前よ。ほら」


 私は友人に手を出した。

彼女はいわゆるギャル系。

金髪をクルクルに巻いて盛っていて、派手なメイク、濃いアイラインが特長。

キラキラにネイルされた長い爪が諭吉さんを私の手にのせた。

いわゆる賭けゲーム。

私がある「男」を1週間で落とせるかどうか。

今のとこ、負けなし。


「あんたたち、そういうのやめなよ」


 そんな私たちを諫めるのがもう1人の友人だ。

彼女は茶髪のショートカット。

ナチュラルメイクでも勝気で大きな瞳がよく目立つ。

正義感の強い子で、私たちの賭け事には反対している。


「恋愛なんて所詮ゲームだよ」


 私のいつものセリフに彼女は呆れた顔を見せた。

見た目も性格も正反対な私たちだけど、意外な程に気が合った。


「ふーん。そういうことだったんだ」


 突然かかった声を見上げると、そこには思いもよらない人がいた。


「え……っ!」


 それは昨日の賭けの対象にされた彼だった。


「同じ大学なんだからさ。バレて困るならこんなところで話さない方がいいよ」


 気にした風でなく軽く笑って続けた。

思わず絶句。

そんな彼はポケットから1万円を取り出し、ヒラヒラと降って見せた。


「ところでさ、ここに同じ理由で手に入れた1万円があるんだけど。この2万円でお祝いしない?」


「は?」


 私たち3人の声が重なる。


「うちの大学の美女3人の誰かを落とせるかどうか、賭けてたんだ。俺らも」


 まさか同じことをしてたなんて。

呆れて笑いが込み上げてきた。


「あはは。いいよ、どっか行こ」


 私は笑って立ち上がった。

彼との不思議な関係はここから始まったんだ――。

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