cast off and……
私、大学デビューします!
高校時代、いつもスッピンで地味な顔立ち。
髪の毛も適当に梳かすだけ。
ぽっちゃり系でファッションセンスは田舎っ子。
色気より食い気。
そうやって生きてきた。
もちろん、モテたことなんてない。
そんな自分とおさらばするため、猛勉強して家から離れた大学を受験して。
受かった後はお洒落の猛勉強。
必死でダイエットして化粧覚えて、ファッション雑誌で最近の流行を勉強して。
美容院で最新のヘアスタイルにしてもらって。
美容院のお兄さんに
「可愛いね」
なんて言われて浮かれてた。
「バカじゃねぇの? そんなことしてもブスはブスのままだぜ」
「うるさいなぁ」
暴言を吐いたのは私の幼馴染み。
小さい頃から意地悪で何度も泣かされてきた。
それなのに何故か同じ大学に行くことになっていた。
「私は華麗な大学デビューをして、素敵なキャンパスライブを送るのよっ!」
「無理無理。見た目変わったって、中身がそれじゃあ無理だって」
私は苛立って無言で彼に背を向けた。
頑張って綺麗になったのに。
もっと褒めてくれたっていいじゃない。
「綺麗になんかならなくていいよ。お前はそのままでいい」
真剣な声音に振り向くと、これまた真剣な瞳をした枯れと視線がぶつかった。
それも一瞬。
ニヤリと意地悪な笑いを見せた。
「なーんてな」
私から視線を逸らした彼はいつもの彼だ。
だけど、一度外れたタガは止まらない。
「どうして私が綺麗になりたいかわかる?」
もう止められない。
「あんたがブスだって言うからでしょ!」
彼のために綺麗になりたかった。
だから、今までの自分を脱ぎ捨てて生まれ変わりたかった。
「あんたに綺麗って言われたいから……っ」
「もういいよ。わかったから」
彼がすぐ後ろに立ち、私の肩に触れた。
「やっぱり綺麗になんかならなくていいよ。他の奴に見せたくねぇし」
そのまま彼は私の体に手をまわして、後ろからゆっくり抱きしめたのだった。
やっぱり大学デビューは止めにしよう。
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