短歌以外3 「大いなる幻影 2」
題:大いなる幻影 2
title: barren illusion 2
西暦1999年
ぼくがまだヨチ
ヨチしていた頃
黒沢清は
『大いなる幻影』
を撮っていた
南国から来た男女が集合住宅を走り抜ける
言葉に意味がな
いことをみんな
もう知っていな
がら言葉でしか
意味を示すこと
もできないから
ひとり女が身を投げる 叫び声が聞こえる
知っていると殊更い
うことも誰にもでき
ず黒々とうずくまり
肩をすくめて携帯端末の画
面を見つめているのが今だ
色とりどりのシャツの賑やかしの楽隊が歩く
いまぼくは大人になって
デジタルの飛沫に溶けて
ビグダータは個別意志で
意味は
インフルエンサーが決め
ているのでだれでもない
花粉が舞い子供連れがガスマスクを架ける
きっと昔は ショルダーフォンで
担いだ黒で話していたが 遠くで
もはや今では スマートフォンで
俯いた頸で眺めていたが 目近で
きっと いつでも人は物を話して
いなどしなかった ことばなんて
もはや 人はおのれ自身を知って
話すなどできない ことばなんて
花粉が舞い子供連れがガスマスクを架ける
色とりどりのシャツの賑やかしの楽隊が歩く
黒服の七人が空中歩道を塞ぎ楚々と歩く
薄い色の砂浜に濁った水から白骨が流れ着く
西暦1999年
ぼくがまだヨチ
ヨチしていた頃
黒沢清は
『大いなる幻影』
を撮っていた
若者たちが低い車に乗って自動車道を走る
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