3※
今日は久々の街の巡回だった。騎士団長にまでなってしまうと、毎日だった街の巡回もほぼなくなってしまった。幼少の頃に過ごした街を守りたくて、非番の日も街を巡回していたのに。それだけは残念だ。
しかしそこで見つけたのが今の従者だ。
何やら魔法で姿を誤魔化していた犯罪奴隷の少女だった。
通常、姿を誤魔化せる程の魔法能力があれば、奴隷になることなどない。精神系の魔法は魔力の消費が激しいからだ。
それなりに魔力があり、魔法も使える少女が少年になってまで奴隷になっているなんて…何か理由があるに違いないと思った。
そして、助けなければいけないと思ってしまったのだ。
「その少年は俺が買おう」
仕事中にも関わらず、ついそんなことを奴隷商に言ってしまっていた。
少女だと分かっていたが、バレたくないのだろうと思い少年のように扱うことにする。
ん?何故少女だと分かったか?
俺は不服ではあるが、脳筋部隊とも言われる聖騎士団に所属している。通称、騎士団に入る者はたいてい魔力が少ない。だから魔法騎士団―通称、魔法団―と違って魔力の調査が行われない。そこにつけこんで俺は騎士団に入団した。
そう、俺の魔力自体はそれなりにあると思っている。魔法団に入団するにはギリギリだろうが、入団出来る程度には魔力があると思う。それなのに何故騎士団を選んだのか。
それは俺の魔法能力が問題だった。俺は攻撃魔法が全く使えない。補助魔法と言われる防御にしか魔法が使えないのだ。防御魔法など、魔法団に入っても役に立つような能力ではないが、騎士団にはもってこいの能力だと俺は思っている。
魔法に頼っているわけではないが、万が一の時に防御が使えるのは精神面でかなり有利だ。おかげで最年少で団長にまで上り詰めることが出来た。少し卑怯と思われるかもしれないが、たとえ防御魔法がなくても、今の騎士団の中で俺に勝てるものはいない。団長の名に恥じない程度には鍛えてきたつもりだ。
そんなわけで、俺は彼女の姿が一応見えている。ただ、魔法のせいで周りがきらきらと輝きすぎて、顔がはっきりとは見えにくいのだが、少年ではなく少女であると認識は出来る。
女性を買うという行為自体は少々考えるところはあるが、少女を守るためと思い行動に出てしまった。決して変なことは考えていなし、しない。
無事に奴隷商から解放してやったが、心なしか顔色が悪い。ずっと縛られていたせいか?体調が悪いのに女性を歩かせるのは忍びない。しかし、横抱きもおかしいだろう。仕方なく肩に抱えていくことにした。
少女を守るために家で匿うのだ。
幸い、引っ越して来たばかり…というか、義両親に押し付けられた家には誰も居ない。家のことはだいたい出来るし、誰かを雇うほどの広さでもないと思い一人で住む予定だったが、ちょうど良かった。奴隷のアピールに家事全般と書いてあったことだ。俺が一番苦手な家事、料理を作ってもらえれば買った理由になるだろう。ほんの少しだとしても、少女が心休まる場所を作ってやれればいい。
その時はただ、そう思って少し手を貸しただけのつもりでいたのだった。
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