第4話 トランプ柄の手袋

「miko、そろそろ手袋、新しいの買ったら?」


「手袋?…確かに、ないなぁ。」


「お母さん買ってあげようか?」


「本当?いいの?」


「たまにはね、娘に何か選びたいもんさ~。」


「ありがとう。」


今ではもう懐かしい話、

お母さんとはよく二人で街に出掛けていた。

それもわりと成人を越えてから。

私が小学生の頃から、夜の店を自分で切り盛りしていた母は、忙しくてほぼ家にいなかった。

だから正直、高校くらいまでは一緒に何かしたっていう思い出があまりない。

でも、母は愛情深かった…と思う。

色々あったけれど…

私にとっては、たった一人の母親だ。


「miko!これは?」


「わー!これ、トランプ柄?」


「そうだね、可愛いんじゃない?」


紺色の生地に、よく見たら色々な色のパステルカラーで

トランプ柄の刺繍が小さく描かれていた。


「いいことあるかもよ♪」


「…じゃあこれにする。」


「わかった!買ってあげる!

お母さんのトランプ占いのトランプ柄だね!」


「あっ…たしかに。」


母は昔からトランプ占いをしてくれる。

これもまた、なかなか当たる。

友人も試して何人かはその通りになった。


"これ持っていよう"


何か縁担ぎになる気がして、

その日から私はその手袋をはめるようになった。



もちろん、あの日も。

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