第51話 俺がアイドル様に呼び出されるはずがない……

翌日、俺は一人で学校に行く。


義妹との話し合いは家にたどり着く前で無理やり終わらせてしまった。

だからなのか、いつもなら俺より早く家を出る義妹が未だに起きてくる気配がなかったので俺は先に家を出た。


しばらく歩いていると、十字路に差し掛かる電柱の近くに一人の少女と出会す。


「おはよう、りっくん!!」

そう言って来たのは紛れもなく幼馴染だ。

彼女の出現に驚いた俺はぎこちなく、「おっ、おはよう……。どした?」と、尋ねる。


すると手を重ね、もじもじとした態度でこちらを見つめる。



「一緒に学校に行こうかなって思って……。」

と言って、うっすら赤い顔をしながら俺についてくる。


軽く幼なじみと会話をしながら歩いていると、すぐに学校につく。

そして俺たちが後者にはいると、靴箱の前では玄白が待っていた。


「陸、美内さんおはようさん!!」

爽やかな笑顔でこちらを見てくるイケメンを見て昨日のことを思い出し、俺は玄白を睨みつける。


「おいおい、そう睨むなよ。昨日のことは悪かったて!!な、この通り!!」

玄白は頭を下げながら手を合わせる。


「そう簡単に許せるか?裏切ったかと思ったんだぞ?それに女の子まで巻き込んで。何かあったらどうしてくれんだっての!!」

靴箱に手をかけながら玄白にを責めると、彼はしょんぼりとする。


「先に言っとくべきだったな……すまん。忘れてた。さすがにもう絡んでくることはないと思うけど、彼女たちのことは俺たちも責任を持って守るから許せ!!」

必死に謝ってくる玄白を尻目に靴箱を開けると昨日の倍のラブなレターが靴箱からエンカウントする。


その様子を見た幼馴染が顔を引きつらせ、玄白はニヤニヤと笑っている。


「お、陸さんモテモテですなぁ〜。俺でもこんな枚数のラブレターなんてもらったことないぞ。」

反省の色もなくにやける玄白に肘で軽く小突くとポケットにラブレターの山を入れて教室へと向かうと、玄白と幼馴染が後ろをついてくる。


「なぁ、昨日の分もそうだけど、どうするんだ?」

玄白が俺のラブレターについて尋ねてくる。その言葉を幼馴染も聞き、不安げな表情で俺の答えを待っていた。


「どうするもこうするもないよ。髪を切っただけで告白してくる連中は苦手なんだ。それに俺のことを知らないだろ?俺みたいなインキャはすぐフラれるだろうから何もしないよ。」

俺がそう言うと幼馴染はほっと胸を撫で下ろす。


「それはそうだな。よく知らないのに告白されても困るよな。」

俺の言葉に玄白はうなずく。


そうこうしているうちに、俺たちはあ教室にたどり着く。

俺と幼馴染が教室に入った途端、今までざわめいていた教室内が静かになる。


「ど、どうしたんだ?急に静かになって!!」

俺が教室内の異様な雰囲気に戸惑い、後ろにいた幼馴染に尋ねる。


「さ、さぁ?」

と、幼馴染もわからない様子だったが、俺が前を向いた瞬間にうっすらとにやけていることに俺は気がつかなかった。


クラスメイトの視線を感じながら幼なじみと離れ、俺は自分の席へと着く。

すると、俺が離れた瞬間に、幼馴染の周りに女子連中が群がる。


……?


クラスメイトの異様な雰囲気に戸惑いを覚えながら、俺が授業の準備をしていると、後ろから「ねぇ、海西くん……。」と言う女の子の声が聞こえる。


後ろを振り向くと、そこには少し戸惑ったかのような表情をするアイドル様の姿があった。突然のアイドル様の登場に俺は少し戸惑う。


彼女とはあまり親しいわけではないが、入学以来よく絡んでくるのはなんでなんだろう。


「な、なんでしょうか?」

戸惑う俺を尻目にクラス中の興味深い様子で見つめるなか、アイドル様をスカートの前でもじもじとさせる。


「ちょっと、話があるんだけど、あとで時間をもらえないかしら……。」

消え入りそうな声で恥ずかしそうに話す姿にクラス中の男子から「アイドル様が陥落した!!」や「海西め〜!!と驚きと怨嗟の声が聞こえてくる。


アイドル様は男子にとって高嶺の花だ。

いろんな男子に告白をされたとか、ラブレターをもらっていたと言う噂はよく聞いていたが何故か全員断っていると言う噂を聞いていた。


それも好きな人がいるとか言うことらしい。

ただ、俺と言うわけではないはずだ。彼女とは義妹の友達と言う接点しかない。


「いいけど……。」

どうして俺なんだろうと言う気持ちを抑えながら、俺は承諾する。


すると、アイドル様は嬉しそうに表情を明るくさせて「時間と場所は後で伝えるから待っててね!!」と言って自分の席の方に向かっていく。


その姿に疑問を抱きながら前を向くと遅れて自宅を出てきた義妹が俺の方をじっと見つめていた。その目の周りにはくまができていた。


義妹はつかつかと俺のとなりに来ると、ゆっくりとした動作で座る。


「おはよう……。」

同じ家に住んでいるのに高校で初めて挨拶を交わすと言う珍妙な事態に陥りながらも俺は義妹に挨拶をする。


「……おはよ。」

驚いたことに義妹から挨拶が帰ってきた。


俺はてっきり「話しかけないで!!」と言われるかと思っていたので驚いた。


「……ねぇ。」

驚いている俺を尻目に、義妹は続けて声をかけてくる。


「ど、どした?」

昨日からの義妹の豹変に驚きを隠せずにいると、義妹が話を続ける。


「さっきのって、何?」

主語なく話してくる義妹に俺は首を傾げる。

その様子を見た義妹がまどろっこしそうな顔でこちらを見る。


「綾乃さんとのことよ!!何話してたの?」

声のトーンを抑えながらも義妹は叫ぶ。


「え、あ、あぁ。冷泉さんが用事があるらしくて話してたんだ。」

と言うと、義妹は驚いたような表情を浮かべ、何も言わずに黒板の方を向く。


その顔はどこか生気なく暗い。その様子に「大丈夫か?」と声をかけると、義妹は「ほっといて……。」と言って机に顔を伏せる。


その言葉に俺は頬をかきながら、先生がくるのを待った。

そんな中アイドル様から可愛らしい手紙が届く。


その中には今日の待ち合わせの場所が書かれていた。

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