第4話 ファーストコンタクト

自分が風になったかのような錯覚してしまう。見よう見まねだったが、案外上手くいき確実に男へと距離を縮めていた。

(クソッ!間に合え!)


既に男は少女の傍へと近づいている。だが、自分が使ったのはあくまでも真似事。速度が徐々に落ちてきており、一回の跳躍では届きそうもない。

(それは、好都合だ!)


一回の跳躍で届くとは初めから思っていない。それに元々、跳びだした瞬間ですら男と比べたら遅かったぐらいだ。だからこそもう一回。もう一回跳ぶことで生じる加速を使う。そうすれば確実に間に合う。


ザッと足が地面を抉る音が聞こえる。今度は右足だけで踏み込み跳ぶ。

「【跳躍】!!」

元々のスピードに力が乗り、先程とは比べ物にならない速さが出る。空気抵抗にさらされながらも、腰に差した剣を無理矢理右手で握り、男の短刀に合わせるように構える。


「…ッ!クッ…」

男はこちらに気づいて受け止めようとするが、時すでに遅い。勢いに負けて男は後ろへと吹き飛ぶ。


「な、なんとか間に合ったー」

男が少女を殺す前に間に合ったことに安堵を覚え、少し気が抜ける。しかし、ホッと一息つける暇などあるはずがない。

咄嗟の判断で薙ぎ払いの様に剣を振ったことが功を奏し、死角から来た一撃を受ける。


「なんだ?お前は…?」

短刀を振るった男は、突然前に現れる。

冷や汗が背中を流れる。先ほどの一撃を奇跡的に防げたものの、肌で感じてしまう。自分と相手との格の違いを。

ここは異世界で、元の世界の常識なんて通用しない。それに、スキルなんて力がある世の中、油断すれば待っているのは死のみ。


(さあ、此処からどうする?)

怯えとも武者震いともとれる震えに支配されながらも、男に剣を向けた。

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