大正霊能科学奇談〜我ら、玄洋に眠る有象無象なり〜
小谷杏子
序章
軌跡 – locus –
道は
いや、もしくは。己がたどった
というのも、おそらくだがおれはいま、
一体全体、どうしてこうなるに
***
さて、この絵葉書は写真機で撮影されたものらしい。どういう製造法なのかは知らんが、かくもこの世の印刷技術は
つるりとした
奇術。その言葉の響きがなんだか楽しく、耳に心地よく残った。そうして、その商人は売り物の絵葉書を一枚、
まるで
このなんとも言えないしみったれた土地を嫌いになるのも遠からぬ話である。なにしろ、海は
実家の貯金を持ち逃げし、上京したのは元号が変わる前のこと。三年も前になるだろう。あれから小遣いを
家族を裏切り、故郷を捨てて新世界へ旅立つことこそ己の道だと信じて疑わなかった。弟たちや村の子どもにはウケた
上京してすぐだった。
「君の腕前なら、異国の地でも通じる」と。
道を誤ったとするならば、もしかすると博多で出会ったあのインチキ露天商がそもそもの発端だったように思う。ここまできたら
「
だが、しかし田舎はいつだって潮くさく、なにも変わりやしなかった。あの都を味わった者なら、誰だってそう思うだろう。浦島太郎だって「あぁ、しまったな」と頭を抱え、精神を
潮風のせいか、髪がやけにごわごわと硬いし、曲がりくねってしまっている。まるで己の道を示すかのように。それを後ろで一本に縛っておき、
ギャラリィが整い、おれはようやく立ち上がり、背広と
「ヤァ、みなさん。ご
帝都仕込みの一礼は、観客のどよめきに
そう心に決めたはずなのに、やはりおれはお人好しが過ぎるのだ。この
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