約束事
お久しぶりですね。またこうしてお会いできるなんて、本当に驚きです。
これまでですか? 私の代ではあなたが初めてです。
旅人には決して真実を知ることができないようになっていますが、旅を終えた方にならお話ししてもいいことになっています。
この島は、神々が創った箱庭です。日本にはそういった場所がいくつか存在しているんですよ。
神々に祈りを捧げてまで叶えたい願い。迷い、苦しみ、嘆くことしかできない人を救済するために、この島は創られたと言われています。あまり力の大きな神様が創ったわけではないそうなので、叶う願いはごくごく限定的らしいですが、ふふっ。
私はここで、多くの思いや願いがこもった品々を、神々に還しています。
古来より、年月をへて古くなったり、長く使ったりしたものには、依り代として神々が宿るとされています。神々の箱庭であるこの場所で納められたものには、神々が宿りやすいんです。
御守こそが、神様なんですよ。
意志を持った御守たちは、元の持ち主と同じように苦しみ、悩みを抱えている人たちを助けてあげたいと、どうにかしてあげたいと願う。そうして時間と空間を飛び越えて、迷い人のもとに行くんです。
御守と神が宿す加護により、旅人はいかなる状況であっても世界を同一であることを認識ができません。言語や地名が同じだとしても、あるいは情報を得たとしても加護により阻害されます。疑問を持つことはできますけどね。本来なら加護は旅を終えたあとでも続くので、仮にこの島に足を踏み入れた旅人も、まず気がつくことはありません。
ごくごくたまに、すべてを知る旅人が現れるのですが。その理由や条件については、あなたは見当がついてるみたいですね。
それについてはどうこういうつもりはありませんから大丈夫ですよ。
これまで何年もの間、ずっと探し続けたあなたの意志と根性には、本当に驚きですけどね。
……なぜ、この島のことを黙っているか、ですか?
大昔からの約束事ですよ。
迷い人である旅人にとって、江宮島は旅立つ場所であって、留まり続ける場所ではありませんから。
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