ぼっちなふたりのラブコメ

くると

1限目 友達

「ペアになってくれない?」

 

 僕が言うと夜桜雅よざくらみやびは鋭い目付きで僕を見ながら言った。


「別にいいわ。独りでできるから」

 

 鋭い目付きは変えずに、視線を僕から読んでいた本に戻した。


「そういう問題じゃないんだよ。今は現代文の授業中で、ペアを作ってお互いのオススメの本を紹介し合うんだから」


 僕は呆れ気味で言った。


「じゃあ他の人と組めばいいじゃない。あなたにだっての一人や二人いるでしょう?」

 

 夜桜は意地悪な笑みを浮かべて言った。

 友達、その言葉を聞くと身体が思わず強張る。

 僕、御影蓮みかげれんにはがいない。いわゆるぼっちというやつだ。学校ではいつも独り。休み時間、昼食、放課後、ずっと独りだ。

 別に人付き合いが苦手だった訳では無い。 ただ、気づいたらクラスの連中がグループになり、取り残されただけだ。大事な事なのでもう一度言う。別に人付き合いが苦手だった訳では無い。

 斯く言う夜桜も人の事を言えた立場ではない。彼女もぼっちなのだ。容姿端麗、頭脳明晰、まさしく才色兼備の彼女ではあるが、このきつく冷たい性格から、クラスの女子からは避けられている。男子からは何度か夜桜に話し掛けてはいたが、夜桜の鋭い目付きで逃げていった。学年で一番の美少女と噂されているのになんとも勿体ない。


「友達がいないからこうして夜桜に頼んでるんだよ」


 わざと皮肉げに言うと夜桜はたじろいだ。


「なっ.........。そこまで言うなら組んであげてもいいわ」

「そこまで言ってないけど。それで夜桜のオススメの本って何?」


 夜桜は鞄の中から一冊の本を取り出した。その本には、「友達の作り方」と書かれていた。


「あなたにピッタリだと思って図書室から借りてきたの。これを読んで友達作り頑張ってね。無駄な努力かもしれないけど。」

「勘違いしないでほしい。僕は友達が作れなかった訳じゃない。友達を作ろうとしなかっただけだ。作ろうとしたら明日にだってできるよ。」

「友達ができない人の言い訳ランキングベスト3には入る言い訳しないでちょうだい。もし本当にできるのだったら作ってきてもらおうかしら。」

「.........。」

「黙り込んでどうしたの?あなたが言ったんだから自分の言葉に責任持ちなさい。」

「すまなかった。明日は言い過ぎた。1ヶ月くらいあれば話は別だけど。」

「なら1ヶ月後楽しみにしてるわ。」

「勘弁してくれ。」












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