恥ずかしいほどの幸福

 甘い甘い小説

 真面目に読めなくなった


 痛い痛いポエム

 開くことすらやめた


 積まれたゲーム

 買ったことを忘れた


 卒業アルバムの写真

 こんな人、いたっけ



 自分が少しずつ変わっていく

 味覚が落ち、視力が下がり、耳が閉じて

 粗い解像度でつながる世界。



 悪いことじゃない。

 日々疲れると、この量しか受けつけられない。

 睡眠時間は明日の仕事に響く。



 あの頃の、甘い宝石に手を伸ばすこと。

 諦めて、苦い世界で我慢すること。

 我慢する顔は、きっと大人の顔に似ていて。



 自分の気持ちに自分が素直になれなくなって、

 恥ずかしいほどの幸福を得られるだろうか



 わたしは、甘くて痛くて恥ずかしいほどの幸福を欲しているんだろうか

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