夏の匂い。
夏の匂い。汗と、教室と、鼻に刺す塩素の匂い。隣の家の子供たちは朝からラジオ体操に出かけていた。耳を澄ますと、セミの声が遅れて聞こえてくる。
言えなかったことが増えていくのは、生きていくものの定め
校庭のど真ん中で、大きな声で君に好きだって
人が恋する現象に理由は必要かい
あなたが言った「恋がしたくなる瞬間は、可愛い甥っ子に触れた時よ。私の子供はどんなんだろー、って考えるから」
僕の手を掴んだ、あなたの手の大きさは変わらない。すっかり手の形も覚えた。僕は握り返した。
あなたの昔のこと。
同じ本の同じ部分だけ何度も何度も読んだとしても、誰も笑うこともない、
馬鹿にすることでもない、
教室で君が読んでいた文庫
きっと、話したかっただけなんだと思う
つい口を開いた「もったいない」と。
笑ってる君の顔を見て、自分の行動が不正解だと知った。
あなたの心の奥底に響くことが、ひとかけらの文章が一番美しいはずだ。
優しい手が僕の手を掴んだ。僕は握り返した。
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