選択肢が無い


 たくさんの選択肢があることが幸せだった



 休日の予定はまっさらなことが嬉しかった



 数年前の自分は、何にでもなれる気がした

 本当の自分になれると思っていた



 夕焼けの下、カバンを背負って歩く影

 当たり前のことが当たり前とも分からない小さい頃


 小さな僕の未来の心配事は、土日は誰の家に遊びにいくのかってことだけ




 物語の中で、少しだけ背伸びをした彼が少女に問う

お前はこれからどうしたいんだい? 少女は何も言わない 彼が続ける お前は大丈夫 何でもなれる



 それを聞いた瞬間、僕は自分の運命を見た

僕はもう、その段階から終わったこと、何者かにならなくても、すでに何かになったこと、生活が目の前にあること

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