ヴァンパイア・エンカウント!

ふかひれ

第一章 探し人

こんなド田舎で誘拐事件!?

「斗真!おーい!どこにいるんだよ!」


高校二年生、青春の真っ只中の夏休みにその"事件"は起こった。

人の気配がない公園に虚しく響く俺の声。返事は当然、返ってこない。


俺の友人の雪村斗真ゆきむらとうまが姿を消した。音沙汰もなく、いきなり。

名付けて、雪村斗真失踪事件。

……ネーミングセンスに関しては言及しないでほしい。



俺たちは田舎生まれ田舎育ち。

真っ白で透明感のある肌と髪、青い澄んだ瞳が特徴の斗真。実はファンクラブがあるほど顔つきが整っていて、俺と比べるとまるで月とすっぽんだ。


そんなイケメン斗真くんだが、事件当日は不思議と目撃者がいなかった。しばらくして斗真の両親が警察署に連絡したのだが、いかんせんここは田舎。署には数人のおじいちゃんと一人の若い男性しかいないため、捜索が思うように進まない。斗真の家族や近所の人々が総出で探しているが、未だになんの形跡も掴めないままだった。



「どこ行ったんだよ斗真…」



斗真が姿を消してからもうすでに一週間。



俺も警察に協力して、祖母の家、学校の図書室、裏山のお気に入りの大きなクスノキの下、近所の公園など、思い当たる場所すべてを片っ端から訪れてみたが、やはり斗真の姿はない。



勤勉で真面目な彼が、連絡も無しに突然いなくなるなんてことはありえない。それに、アイツは暑いのが苦手だ。夏休みの間なんかは家でよく読書をしている。自主的に外に出るというのも考えがたい。


親には「少し出かけてくる」と言って外出したそうだが、それっきり帰ってこないそうだ。




そういえば斗真は、いなくなった日の前日にこんなことを口にしていた。


「僕、招待されたんだ」と。



「パーティか何かか?楽しんでこいよ!」

「…あぁ」


俺はてっきり親戚のパーティかバーベキューに招待されたんだと思っていた。


でも、斗真の両親に聞いたところ、雪村家の親戚はほとんどいないらしく、招待を受けるような間柄ではないという。




俺は、斗真が何者かに招待を受け、その後攫われたんだと推測した。




まだ根拠はないし、殺人事件だったりひき逃げだったりするかもしれないが…

どちらにせよ、斗真の身に災難が降り掛かっているのは確実だ。



あの時、もっと詳しく話を聞いていればこんなことにはならなかったかもしれない。


俺は拳を握りしめ、悔しさを滲ませる。斗真は俺が絶対に見つけ出してみせる!




俺は自転車で心当たりのある家を一軒ずつ回って行ったのだった。

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