第25話 わたし船

人づてに私の耳に情報が入ってきた…



遠い北の田舎町にとても川幅が広い河があり、そこで1年に1回わたし船が渡航されるとの話が。



「あの船に乗って向こう岸へ行ったら 新しい私になるの知っとるだか」



私は一縷の望みを託し、わたし船の受付小屋へと向かう。


その日は毎年嵐が来るといわれている日であった。


少し風当たりが強い口調で受付人がわたしに聞く。


「覚悟はできてるかい」


「はい できています」


ギコ ギコ ギコ ギコ



途中嵐の前兆なのか突風に流され、かなり河口付近まで来てしまった。


「お前さん この船はじめてかい?」


「はい」


「じき着くから 用意しておけ」


「何を」



船頭のじいさんはそれ以上何も喋らない。寡黙っていうやつだ。



「着いたぞ」


「ありがとうございます」



向こう岸に着き用意された白いガウンで待ち受け包まれる。



「ああ 良かった よかった」


「ん?声が出ない」



なんか懐かしい匂いがする。


優しい声 暖かい眼差しが…




「はやく声きかせて頂戴」


「    オギャー」


「やっとないたねこの子」


「  ん ギャー」



私自身の手、脚、眼、姿を見て生まれたてなのがすぐ分かった。


「いえーん うんっぎゃーん!」


「いえーい」


yeah  happybirthday!!


生まれ変わったの 渡し


「子の子はお舟と名付けましょう」


いつの時代かもよくわからない 顔素 の花が河の岸辺に浮いては沈み、遠のいて言った。


「のぺらぼう」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る