第43話 坂井晴人の視点

 あの日、僕は仕事が終わり、いつも通り帰宅するために歩いていた。


僕は、外科医。


手術することもある。


その日は、手術をした後でとても疲れていた。


焼肉食べてぇな。


家に帰っても1人だし、1人焼肉でも行くか。


空を見上げると、夕暮れ時に差し掛かっていた。



歩いていると、100メートル先で男女が何か言い合っている。


言い合っているというよりは、男のほうが一方的に女に向けて言っているという感じだが。


よくある喧嘩かな。


のんきに思っていた。



男が手に何かを持っている。


最初は、暗くてよく見えなかったが、街灯の光のおかげでなんとか見えた。


ナイフだ。


その瞬間、自分でもびっくりするほど反射的に男女目がけて走っていた。


無我夢中だった。


でも、遅かった。


たぶん、刺された。


でも走った。


そして、男がナイフを抜き、もう1度刺そうとしたそのとき、


その男に体当たりした。


体当たりした勢いで男は吹っ飛び、動けなくなっていた。


体当たりしたときに、殴りもいれといたからな。



ナイフは血がついた状態で道路に転がっていた。


女の子は……!?


倒れていた。お腹から血を流して。


すぐに駆け寄った。


近くまで行って分かった。美しい顔。きれいだ。



そんなことより、まずは止血しなきゃ。119番も。


お腹から血がどんどん出ている。


これはかなりまずい状況かも。


早く救急車きてくれ。


願いながら応急処置した。


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