第26話 

 今まで、仕事の付き合いで関係ができ、抱きしめられたことはあった。


でも、そこでは感じられなかった温かさが坂井には、あった。


そんな温かみを感じたのは初めてだった。


涙が自然に出てくる。


そのまま、何分か泣いた。


坂井はずっと抱きしめたまま、何も言わないでくれた。


「ごめんなさい。いろいろ言って泣いて」


「いいよ。なんか柚さんの闇を少し知った気がする。


たぶん、これが全部ではないと思うけど、僕が想像


する以上にいろんな体験してきたんだね。つらかったな。


話してくれてありがとう。


柚さんに会った時から、なんか陰みたいなものを感じてたんだ。


だから、心配してた。


これからはさ、何かあったら話してくれん? 力になりたい」


「ありがとうございます。こんなわたしのこと気遣ってくれて」


「全然。いつでも言ってね。愚痴でも聞くしさ」


空を見上げるとそこには満点の星空が広がっていた。


主治医が坂井先生で良かった。


今日は悪夢は見ないで、安心して寝れそう。


不思議とお腹のズキズキは、気にならなかった。

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