第25話 

 夜、9時には消灯される。


その日は寝れなくて1人目を開けていた。真っ暗な中で。


あ、そいえば、同じ病室の3人から屋上があることを教えてもらった。


そこ行こうかな。


屋上に初めて行ってみた。


満天の星が空に広がっていた。


「きれい」


思わず声が出てしまった。


そして、なぜか涙が出てきた。


わたしは、いま病院にいる。死なずに。


生きている。


あのとき、原田に殺されれば、自分の生きてる価値を考えることはなくなっていた。


原田に殺されることも自業自得。


ズキ。刺されたお腹が痛む。


なんで、助かってしまったんだろうか。


悲しくなった。


「あれ、佐々木さんじゃん。どうしたの? こんなところで」


みると、そこには坂井先生が立っていた。


咄嗟に涙をふく。


「大丈夫? なんかあった?」


「なんで、いるんですか」


「ちょうどね、休憩中。星空でも観ようかなって。


よく来るんだ。ここ」


「そうなんですね」


「どうしたん。泣いてたみたいだけど」


「……」


「どうして、助けたんですか。わたしのこと」


「なんでって。普通、人が倒れてたら助けるでしょ。血も出てたし」


「助けなくて良かったのに。そしたら、死ねたのに」


「あなたが死んだら家族や友達が悲しい思いするよ」


「わたしが死んでも誰も悲しまないですよ。わたしなんて、生きてる価値ないんです」


「そんなことないよ。少なくともあなたが死んだら僕は悲しい」


「医者って、そういう患者に寄り添うの上手ですよね。あなたみたいな、頭良くてかっこよくて人生成功してる人には私の気持ちなんて分からないですよね。分かってもらおうなんて思ってないですけど」


「佐々木さん、どうしたの? なんかいつもと違う」


「わたし、中学のとき、いじめられてたんですよ。かなりひどいいじめ。


親友にも裏切られて。


高校のときは、先生にいじめられて。


そんな人生送ってきたから、いじめられたおかげで、わたしはこの世にいないほうがいい存在って、証明されてきたんですよ。


でも、なかなか死ねなくて。


今回もストーカーされて、刺されて。刺したってことは、死んでほしいってことでしょ?


何人の人からも恨まれてるんです。わたし。


もう生きてるの辛いんです。


いじめられたときに、死ねば良かった。


そしたら、こんな思いせずに済んだのに」


涙が溢れてくる。


「なんで、坂井先生にこんなこと話してるんだろ。みっともないですよね。


すみません。


私、こんなこと


家族にも言えなかったのに。なぜか話しちゃいました。


忘れてください」



温かいぬくもりが、私の体を覆った。


抱きしめられた。


なぜか、嫌じゃなかった。


「そんなこというなよ。大変だったな。ゆずさん」


しばらく、温かいぬくもりで、抱きしめられていた。



涙が止まらなかった。


満天の星空の下で、わたしの中の何かが変わったような気がした。

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