一介の浪人生だった俺が、前世階級がSSSだったことが分かり生活が一変!《結婚相手は誰を選ぶ??》
かどめぐみ
第1話 前世階級はSSS?!
「お、落ちてる…。」
大学入試発表当日、パソコンの画面で結果を確認したユウスケは、手元の番号とパソコン画面に立ち並ぶ番号をもう一度交互に見て確認した。
何度確認しても、2014という番号は見当たらない。
滑り止めの滑り止めにすら合格できなかった現実を目の当たりにし、まずは親になんと言い訳するかを考える。
この大学を受験することすら、父親にはボンクラクソ大学を受験するんだ金を出してやることをありがたく思え、と吐き捨てるように言われたのだ。よもや受験に失敗したなんて、どう説明していいものか。
はあ、とため息をついてユウスケは自分の人生というものについて、物思いを巡らせた。
生まれてこの方ずっと、何かがうまくいったことなどない人生だった。
クラスでは常に地味な方で、地味で真面目そうな風貌だから勉強はできるのだろうと周囲には思われていたが何ということはない、勉強もできない。
誇れることと言えばゲーセンでの音ゲーくらいだった(大会でもなんども優勝しており、その界隈ではなかなか有名だった)が、それも一心不乱にしている姿をクラスの女子に目撃され、言いふらされてからはトラウマでできなくなっていた。
『ほんと、村田きもいよ。』
クラス一の美少女・長谷川さんのかわいらしい声で再生されたそのセリフが頭に浮かんでくる。
あれは、席替えで長谷川さんの隣になった時だった。落としたシャープペンシルを拾ってもらっていい気になってしまい、「あ、あ、あ、ありが、とう。」とぎこちなく言ったユウスケを、長谷川さんは汚いものを見るかのような目でにらみつけたのだった。
ちなみにその数週間後、長谷川さんはクラスいちのモテ男であるサッカー部エースの松浦君と付き合い始めた。
ユウスケは、隣の席で楽しげに話す長谷川さんと松浦君を横目でちらちらと見ながら、あたかも興味がないかのようにスマホゲームに熱心になるていで、休み時間をやり過ごしていたのだった。
嫌なこと思い出しちゃったな、と苦い顔をしながらユウスケはリビングへと降りることにした。平日のこの時間は母親も父親もおらず、とりあえずは緊張せずに昼めしのカップラーメンを調達することができた。
湯を沸かしながら、暇つぶしにテレビをつけながらカップ麺の火薬を袋から取り出すなどの作業をする。
テレビ画面には、今はやりのモデルが激辛ラーメンをすする姿が映し出されていた。
きゃあ、熱い、などとかわいらしい声を上げてラーメンをすすっている。かわいらしいとは思うものの、多分一生かかわらないであろう人種である。ユウスケは、人生の中で、そういう諦めの付け方をいち早く学んでいた。
カチ、という音がしてケトルがお湯を沸かし終わる。
沸いた湯をカップ麺に注いでいると、いきなり、テレビ画面がぱっと女子アナウンサーの顔を映し出した。あまりに突然切り替わったために、ユウスケはどこかで大きな地震でもあったのだろうかと画面を注視した。
「ただ今入りました速報です。政府は、明日より、全国民を対象に前世階級を開示し、階級に応じた身分制度を導入することを発表しました。繰り返します。政府は、明日より前世階級を開示、それに応じた身分制度が導入されます。」
アナウンサーの顔はひどく引きつっており、それと同時に緊急速報、という白い文字がテレビの上部分に表示された。
ユウスケは、カップ麺の三分を測ろうとタイマーをセットし、スマホを開く。
“身分制度ってマジかよ“
”具体的にはどういうこと?前世が悪いと、奴隷みたいになっちゃうってこと?“
”前世王様だったら現世でも王様?自分の前世知りたすぎる!“
タイムラインは先ほど発表された前世階級制度のこと一色である。
クラスの地味仲間、大崎からもメッセージが入っていた。
『俺ら、前世で一発逆転できちゃったりして。笑』
一発逆転、とユウスケは口の中で繰り返してみた。なんとも実感の湧かない言葉である。
テレビでは早くも首相官邸に詰め寄るマスコミの姿が映し出されていた。
ピピ、という音をタイマーがたてた。ユウスケはタイマーを止め、カップ麺をすする。
大崎のメッセージに、『んなわけ笑』と返し、ぼんやりとテレビ画面を見つめる。
入ってきた詳しい速報によると、今回の制度は、近年の医学研究により、前世を明らかにする方法が発見され、また、それによって明らかになった前世に基づいた生活を国民が送ることにより、国家が繁栄し豊かな生活ができるという予測数値をAIが算出しているらしい、とのことだった。
諸外国に先駆けてこの制度を導入することで、一番乗りで国家を繁栄させてやろうという政府のたくらみであるようだ。
階級はSからFまでの七段階までで、個人情報の保護のため具体的な前世を知ることはできないが、階級が通知されるらしい。
『俺の予想、七段階中の五。』
つぶやきをタイムラインに送信し、ユウスケはスマホを閉じる。
翌日、自分のもとにまさかSSSの通知が来るなんて、その時は予想だにしていなかったのである。
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