三種三様な異世界生活

@Kyurus_131

第1話 始まりの始まり

 いつもの道で桜が舞い踊る




 そんな中、『僕』は歩き続ける



 ただひたすらに……


 ひたすらに…………



   ★



 いつもの様に教室に入ると「おっはよー!!」と聞こえてきた。

確実に、僕に言っていると分かっていた。

……が、


「…………」


 僕は自分の席に着いた。

こいつはスルーしておく。無視しているわけではない。

そう!! スルーなんですよ。なんでそんな事をするかって?

こいつ 音野おとね よう が、僕こと 神無かんな 響弥きょうや にこんな

可愛い女の子みたいな声で話しかけてくる時というのは、

絶対にロクなことにならないと、本能と理性と僕のここ高校3年の経験、

その他諸々が分かっている。

あ……こいつ女だった。

自分の身を守るために、無…っとのだ。

自分で言ってて物凄く恥ずかしくなる。

あぁーもういっそのこと僕を消してくれ……

そんな事を考えていると、


「……って、聞けよ!!!」


「ってぇ!!なにすんだよ!!いきなりチョップとか!!!」


「今日!一緒に!帰ってあげてもいいけど!!」


怒っているのか少し顔が赤くなっている気がする。


「そ?ありがと?……でもなんで今日なんの?」


「はぁ⁈今日は卒業式でしょ!!!想い出作り!!このおバカ」


ん?想い出?卒業式?

そういえばそんな事もあっつえぇ?!

そこで僕の意識が、覚醒した。

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!ほんまじゃぁぁぁぁ!!!」

何気なくなんにも考えずに学校にきていた。

そのため全然、気がつかなかった。

よくもまぁ、こんなにも気がつかないもんなんだな。

なんか、すげぇや。

物凄い勢いで立ち上がったばかりに机が倒れた。

黒板にはでかでかと「3-B卒業おめでとう!」と先生の字で書いてあった。

その周りには「大学生になっても会いに来るよ!」なんかと他生徒のメッセージやらが書いてある。


「何処見てんのさ。黒板に堂々でかでかと書いてあんじゃん。今更、気づいたの?」


こいつは何て冷静なんだ。僕は驚くのと自分に呆れるのに忙しんだ。


「僕の状況が理解できないと?」


少しだけ威圧してみた。

ようが冷や汗をかいているのが分かった。

そんなに怖がらなくてもいいのに。

廊下が段々と騒がしくなる。

先生に「今から体育館に行くわよ~」と声を掛けられる。


「ほ、ほら!体育館いくよ!」


「こやつ、誤魔化しおったぞ!!」

そんな会話をしながら廊下に出た。



   ★



クッソ長い校長ハゲジジイの話やらが続き、無事に卒業式を終わった。

「なんだよ、あの校長クソジジイ!!話が長いぃ~~」


僕がそんな愚痴を言いながら歩く。隣で「なんで年寄りって、あぁも話が長いのかねぇー」とようが言う。「まぁ、そうだね。年寄り、皆、話長いな。」と頷く。そんな事を言っていると、急にようが、


「ここっ!ここに来たくてっ!」


と可愛く指差す。

そこには最近新しく出来たケーキ屋があった。


「こんな所で、想い出作り?」と聞くと、

そうだけど?と言い顔を少し赤くするよう。仕方ない、付き合うか。

なんで顔を赤くしているか、全くもってわからんが。

ドアにはケーキの、ドアの取っ手にはイチゴの装飾が、綺麗に施されていた。


「一番乗りっ!」とよう

物凄く元気にドアを開ける。僕も続いて、店の中に入った…………



   ▲



 卒業式が終わって帰り道。

俺、 能間だいま 優希ゆうき は独りで歩いている。


「はぁ……」


俺は人には無いものを持っている。そのせいで毎日が退屈だ。

この超人的能力のせいで。

溜息をつきながら、何も無い大通りを、ただただ独りで……

昨日も、今日も、何も無かった。きっと明日も、何も無いだろう。


「つまらん……」


本当につまらない。

この世界がつまらない。

何も無いこの世界が…………


「はぁ……マジでつまらん…………」


 こんな事を考えてられるのが、今日で最後になればいいのに…………

すると、


「………少年、面白いな………」


と女性の声(?)がした。

声がした方に目をやると、そこには、黒猫が座っていた。


「お前が?いやまさかな………退屈過ぎて、幻聴聞こえるとか……」


俺は、自分をふっと鼻で笑って黒猫に、「じゃな」と言った

黒猫は「ニャ~」と返事をして、俺と逆の方向に歩いて行った。

その直後、黒猫にトラックが……


「っ!!」


俺の体は、考えるより早く動いていた。

優に30mは超えていたが、脚に思いっ切り力を入れる。

黒猫の所まで、僅か約0,3秒。

ダッシュして黒猫を、反対のガードレールに投げた。

能力があって良かったと、産まれて初めて思った。


「おいおい……こんな幼気な猫を、投げるとは……」


さっきの女性の声(?)が聞こえた。


「なっ!!」


瞬間、黒猫が空中で一回転し、後ろ足でガードレールを蹴り、弾丸の様にこっちに飛んで来た。

が、少し遅かった。

俺が黒猫に、あたりさえしていれば、もしくは、黒猫がもう少し速かったら、俺は助かっていたに違いない。

残念ながら、俺と黒猫は同時にトラックにぶち当たった。


「ごはぁ!!!」


そのまま、道路で2、3回バウンドし、勢いを保ったままガードレールに突っ込んだ。

当たり所が悪かったのか、物凄い衝撃が体に来た。

何も残せないまま、何も出来ないまま。

そんな事を考えた。

このまま全てが終わる………

最期の力の全てを使って、又もや自分を鼻で笑う。

………最期まで、俺は…………


「あぁ……やっぱ…り、つま……ら…………ん…な」


辺りは、あかく染まっていた…………


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