第18話  未来予知

 セーナ「逃げるな!」

 A「けったいな!逃げてるわけじゃないよ。…あなたが当てられないだけでしょ」

 セーナ「うるさっい!」


 ダッダッと地を蹴る音が響く体育館。


 これがもう10分程続いている。


 セーナ「ねえ!あんたの仲間どこに行ったのよ!」


 A「さあ?」


 セーナ「ほんとムカつく!」


 A「はっ元気いっぱいだね」


 セーナ「殺すぞ」


 A「陳腐ちんぷな言葉。弱く見えるよ」


 大丈夫これでいい。

 この子の意識を私に向けていればいい。


 本当にこれでご主人様は助かるんだよね。

 いや私はウッカを信じる。

 だからこそ今はこの子の相手をしよう。


 A「あぶっ」


 それにしても、この子強いよ。



 体育館…

 ウッカ「はぁ…はぁ…」

 足がもう…でも頑張らなくては!


 星奈「あの!私たちどこへ向かっているのですか?」


 ウッカ「私は、逃げるつもりです」

 星奈「あの人は見捨てるのですか?」

 ウッカ「はい」


 無音が続く空間。

 それを破るように星奈が一言。


 星奈「そんなのダメです!ダメですよ!言ってたじゃないですか、メイドーズって!大事な仲間なんですよね!だったら見捨てちゃダメです!」


 ウッカ「私だって…え?」


 星奈「?」


 ウッカ「未来が変わった?一体何が…」


 恐る恐る手帳を見るウッカ。その手帳にはこう書いてあった。


『17時59分ー死亡』


 ???

 一瞬理解できなかった。

 だがすぐさまウッカは理解した。

 そう未来は変えれていなかったと。


 ウッカ「どうにかしなければ。あなたはここにいて下さい」


 星奈「まさか!助けに行くのですか?なら私も!」


 星奈がそう言うとすかさずウッカがこう怒ったように一言。

 ウッカ「犠牲は!……一人でいいです…だからここにいて下さいお願いします…」

 星奈「あっ……」


 ウッカは星奈の答えを聞かず立ち去った…。


 ???「いいの?そのまま行かせて」


 星奈「誰!?…誰もいない」


 懐かしい感じ。でも日常の匂いもする。

 何故だかわからないけど。今はまず、あの人を止めなければ!


 星奈は走る。


 そしてその場に残る影。


 ???「まったく。やっぱり私がいないとダメじゃん」


 …

 そこには誰もいない。



 体育館…

 セーナ「とらえた!」


 セーナの刀がAの肩を貫く。


 A「うぐっ…痛い」


 鋭い痛みが体全体に広がっていく。


 A「もう!嫁入り前の体ぐらい大切に扱ってよ!」


 セーナ「嘘。私の刀を抜いた?そんなありえない。……まさかあなた!」


 A「痛い……うう…」


 セーナ「どうでもいいか…さっさと終わらす!この一撃で!」


 A「くっ!」


 体が…動かない!

 動け動け動けぇぇぇ!


 あっ…

 ご主人様…すいませんでした…

 ごめん…

 …なさい。


 死んだ…。

 …

 …

 ?

 A「あれ?死んでない?」


 セーナ「邪魔しないでよ…もう片方のメイドさん!」


 そこには、『凛々しく』『優しく』なにより『」私の大切な仲間がそこにはいた。


 ウッカ「大丈夫ですか、先輩!!!」


 自信が湧いてくる。

 私はウッカの問いに答えるように口を開いた。

 A「大丈夫。そっちは?」

 ウッカ「大事な鈴が壊れたこと以外は大丈夫です」

 A「それはよかった!」


 その時のセーナは戸惑っているようだった。

 そんなのセーナが一言。口を開いた。


 セーナ「なんなのよあんたら」


 見なくても分かる。

 そう次のセリフは…。


 A「教えてあげる!私たちは…」

 ウッカ「私達は…」


 A、ウッカ「「メイドーズだ!です!」」


 セーナ「へぇ、仲間…か」


 A「行くよー。ちゃんとついてきてよね!ウッカ!」


 ウッカ「それは私のセリフですよ鳥先輩!ちゃんとついて来て下さいよ!」


 A「だから鳥先輩って言うなー!まあいいや、セーナちゃん。本気でいくからね」


 セーナ「もとよりそのつもり!」


 今Aとセーナがぶつかり合った。


 その時最後の出演者が辿たどり着いた。


 星奈「メイドさん!これを!」


 ウッカ「あなたは!何故ここに!?」


 星奈「死なないためです!ふー!…」


 光が上本星奈かみもとせいなを包んだ。

 そして現れたその姿は、まるでセーナをコピーしたような容姿、そして武器を持っていた。


 上本星奈は刀を持ちそして…


 星奈「メイドさん!これを!」


 刀が宙を舞う。


 その刀が今。ウッカの手元に降り立った。


 ウッカ「コレは…ありがとう名前は…いや、ありがとうございます!」


 セーナ「ああもう!めんどくさい!」


 ウッカ「先輩これを!」


 A「刀?」

 ウッカは横を指差している。

 A「ああ…ありがとう赤髪の子!」


 セーナ「刀を手にしたって私には勝てない!」


 やっぱり。技量が違う!勝てない。


 A「うぁぁぁぁあ!」


 セーナ「あぁぁぁぁあ!」


 何かが心の奥底から湧き立ってくる。

 何かが…。


 A「うっ…」

 セーナ「決まった!」


 グサッ……Aの胸には刀が刺さっていた。


 ウッカ「そんな…先輩が…死んだ?」


 地に落ちたその体を守りに行くようにウッカは前に出た。


 セーナ「まっ野暮なことはしないよ」



 ……

『私…死んだの?まだいっぱいやりたいことあったのに…いや違う…私は…そうだ。なんて忘れてだんだろ。私は…まだ…死ねない!!!』


 燃える。

 新たな卵が生まれるがごとく。



 ウッカ「せん…ぱい」

 初めて流した涙。あって間もない関係。だけど私は知っていた。こうなることを…。

 ウッカ「うっ……先輩…」

 ……

 え?

 未来が変わった?

 まさか!


 そびえ立つ一人の少女。

「そんなに泣かないで…ウッカは笑っている顔が一番だよ!笑顔見たことないけど……」

 そこに降り立った一人の少女。

 その名は…

 ウッカ「鳥先輩…」

 A「だから!鳥先輩って言うなー!」

 ウッカ「ありがとうございます」

 A「え?…うっうん」


 その時ピピピ!ピピピという音が鳴り響いた。

 セーナ「時間切れか…こりゃ怒られるな…」

 そう言うとセーナはその場から消えた。


 A「あれ?セーナちゃんは?」

 ウッカ「わかりませんが、これだけは確実に言えます。ご主人様は助かりました」

 A「よかったー。これで肩の荷が降りたよ」

 ウッカ「はい。そうですね。先輩!」

 A「うん。そうだね」


 

 私、上本星奈はその場から立ち去ることにします。あっみなまで言わなくても大丈夫です!これは私なりの配慮ですから!


 うーん?それにしても亜衣坂あいさか先輩と酉乃とりのくんはどこにいるのでしょうか?


 いや帰ったのでしょう。

 とんだ一苦労でした。

 でもいい一日でした。


 サイコーというやつです!

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