第14話
「いかがでしょうか、最近は殆ど連絡を取っていないらしいではありませんか、幾ら思っていても表に出さなければ伝わりませんよ?」
なんせ聞いた限りだと、味方もいないらしいし。
そんな状態で声をかけて欲しい人がいるのに、連絡も来ないなんて悲しすぎる。
「……連絡、そうだね。手紙とかかな。でも王宮内部にいる彼女に届けてもらうのはいいけれど、もしそれが見つかったら彼女が酷い目にあうかも知れないしな……だから送れなかったんだし」
提案を聞いたアルサメナ様は、そう否定する。
「王宮の情報網は怖いですからねぇー、私だって潜入しろって言われてもしたくないですよ、王様は何をするか分かりませんし、損得で動いてくれるならまだしも、今の彼は欲望のままに生きてますからね」
ルヴィは身震いしながら言う。この胡散臭い従者でも王宮に入るのは難しいか、なら今まで何もできなかったのも仕方ないのかも知れないけれど。
でも今は私がいる。
「……では、本の中に暗号を挟みましょう。頁と、行と、何文字目、の三つの数字を並べて作った暗号を栞として挟むのです。これが暗号と分かっている人間なら解くのは容易いですが、本と一緒になっていなければ、ただの数字の、羅列。バレることは殆どないでしょう」
「そんな知恵がよく思いつくものだね。それしても本か。ならベルミダが読んでいても不自然では無いものにしなければならないな。何か心当たりはあるかい?」
「聞いたところによると、最近は叙事詩を好んでいるとか」
「……そうか、わかった。君の言う通りにやってみよう。暗号と本は君が届けてくれるんでいいかな?まあ……君以外に持っていける人はいないんだけど」
「ええ、勿論です。必ずやご期待に添えることかと」
本の暗号、これは実は私が考えた訳じゃあ、ない。
随分と昔に、ナローシュと私が遊びでやっていたものだった。
この方法を考えたのはナローシュだった。
彼は、私があまり本を読みたがらないから、こうすれば本を読む気になるだろうと言って、お互いに本を読みながら、秘密の会話を楽しんでいたのだ。
今思えば別に秘密にするような会話でもなかったのだけれど、他の人に内緒で、自分達だけの秘密を共有することに、何ともドキドキしていた。
あの頃の感情は、まだあの人の何処かにあるのだろうか。
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