第7話

「……へぇ、そうなの」


 薄く返事をすると、私の目をじっと見つめる。


「なんでしょうか?」


 物凄い間近で見つめてくる。


「……あ、いえ。どこかで見たような目をしているものですから…….」


 ……え、何。この子。私の知り合い?いやそんなはずは。


 じゃあ、このやり取りだけでバレた?


 そんなわけ。


「ええ、……貴方……随分と綺麗な肌をしているのね、まるでどこかのお姫様みたい……」


 私の頬を確かめるように触れてくる。


 ……何かわからないけど、危険な気配がする。流石にまだバレるわけには。


 早く逃げないと。


「あの、近過ぎます、ナローシュ様の後宮ならば節度を──んぅ!?」


 口元を隠す布を剥がされ、一瞬で唇を奪われた。


 え、何してんですか、この人!?


「ん……これで借りは無しという事で、よろしいでしょうか?騎士様?」


 ほんの少しだけ、頬を上気させてそう言う。


「え、はい?」


「ふふ、本当に女の子みたいな顔してるのね」


 いや、正真正銘の女の子なんですが、それは──って。


「……何をなさっているのですか?」


 身体のあちこちを確かめるように触ってくる。


「──ああ、やっぱり、なるほど」


 ……この人、何をまさぐっているのだろう。


 ……いやまあ、後宮には男は"一応"入れないし、そういう人はいなくもないけど。


「あなた──」


 まあ、バレてしまったものは仕方ない。


「……その通りです。私は」


「──宦官なのね。……通りで何をしても動じない訳だわ」


 え?……え?


「え、あ、はい……その通りですが」


 なんでそうなるの?怒りますよ、流石に。


 いや、まあ確かに後宮には宦官にされた男の奴隷はよく居ますけど。


「……よく分かりましたね」


 いや、もうそういう事で通すしかないかぁ。


「……線が細く見えても、この硬い筋肉は触れれば分かりますもの……」


 私だって好きで硬い訳じゃないんですけど。


 ……そんなに硬いかな、いやそんなはずは、流石に本物の男よりは柔らかいはず……


「あの、もう離れて頂けますか?」


「……え、ええ。また会いましょう、異国の騎士様」


 何とも言えない表情で離れると、そそくさと去って行った。


 ……一体何だったんだろ。

 

 

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