第三部最終話「星雪の降る日」

ハーヴェス王国の内乱は終結した。しかし、喪ったものはあまりにも大きい。


何より、王国に迫る”終末の巨人”を退け得る存在であったイオーレ=ナゼルを自ら除いてしまい、対抗する手段がないと思われる中で戦わなければならない、絶望的な状況であった。


そのような中で、”星月巡り”の前に現れたのはかつての仇敵。

”最後の聖戦士”オルエン=ルーチェであった。



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「俺には、アンタの真意がわからない。アンタはいつも、味方する側をコロコロと変えているように見える。アンタは一体、何がしたいんだ?」

「そうね…誰にどう捉え方をされても良いけれど」

「私の敵はいつも、私自身が決めてきたわ」

―シガレットとオルエンの会話より

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“最後の聖戦士”オルエンは言う。戦略都市タージと違い、”終末の巨人”は蛮族のコントロール下に置かれていない。巨人はタージの再起動と連動して復活しただけで、”竜姫の牙”カルフが示していたように、巨人は人族の魂を制御システムに移植して稼働する自律兵器であり、内部に囚われた者の意思で動いている。


では、何者が巨人をコントロールしているのか、という問いに対しては。


”終末の巨人”という殻の中にある魂とは、400年以上前に共に魔神王と戦った聖戦士のひとり、だと彼女は答えた。


星天の神ハルーラが降臨するにあたり選ばれた人間の高貴な女性。彼女は少々複雑な家庭環境にあり、兄とされる肉親がいたものの血は繋がっておらず、しかもその兄に禁忌の思慕の情を抱いていた。


そのような中で、思慕する兄には奈落の盾神イーヴが、自身には星天の神ハルーラが、聖戦士となるため降臨した。イーヴとハルーラは兄妹神として知られている。


そうして誕生した”聖女”ハルーラであったが、精神上は真の兄妹となった神としての神格と、許されぬ慕情を抱いていた人間としての人格の狭間で大きな乖離と葛藤が起こり、彼女は精神的に不安定になっていった。


そのような彼女を安定させ、人としての人格を封じるために”賢者”オーブレイは”勇者”ライフォスと共に聖戦士の神器を造り出した。”聖女”ハルーラに与えられたのは”希望の杖”コルヴァーナ。これによって当面の問題は解決し、彼女は仲間たちと共に魔神王と戦い、勝利に導いた。


最後の戦いを経て、聖戦士の生存者は6人。”賢者”オーブレイ、”剣聖”クラウゼ、”魔動機士”オルエン、”炎使い”グレンダール、”白騎士”ティダン、”聖女”ハルーラ。


戦後、ダリオンの”翠星の弓キルキナエ”やノヴァの”天空の槍グングニル"を人々が利用するなか、聡明なグレンダールのように自身の神器を封印する者もいたが、ハルーラは神器を手放すことが出来なかった。人間としてのハルーラの精神は、愛するイーヴが最後の戦いで散り、喪われていたことに耐えられなかった。


この状態から逃れたいハルーラが自ら望んだのか、それとも”賢者”オーブレイに何らかの意図があったのかわからないが、”聖女”ハルーラは自らの肉体を捨て、役割を終えて抜け殻となっていた”終末の巨人”に《オーブレイの禁術》によって自らの魂を封じられることになった。

同じころ、オルエン自身は病床の”剣聖”クラウゼと行動することが多く、この動きには気付いていなかった。


寿命の短いタビットのオーブレイが死去してしばらくの後、人々は愚かにも最後のはじまりの剣を入手しようと戦略都市タージと巨人を利用した。結果として人々は大きすぎる力に振り回されると共に、”蛮族王”ムーレイズの振るうはじまりの剣イグニスの力によって魔動機文明の滅亡に繋がっていった。

そして《大破局》を経て勇者エルヴィンの盟約によってタージと巨人は封印される。



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「私が最後に知る彼女ハルーラは、ウルシラ地方で布教活動をすると傍ら、オーブレイと共に何らかの大規模な魔術の実験をしているようだった。その取り巻きの末裔がスフバール聖鉄鎖公国にいたのでしょう」

「イオーレ=ナゼルと戦わなかったのは、末裔とはいえ愛する者に連なる者を滅ぼすことを避けたのではないかしら。……そのような正気が残っているとも思わないけれど、そのくらいしか理由が思い浮かばないわ」

―”最後の聖戦士”オルエン=ルーチェ

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そして、”終末の巨人”は対空対地ともに最強の魔動機兵だが、後腰部に隠された内部への入り口がある。そこから侵入し、制御システムを破壊することで巨人は止まるという。しかし、侵入のためには囮となり、巨人の動きを制限させるだけの戦力が必要だ。


巨人が王都に到着するまで約10日前後。ハーヴェス王国の要請を受け同盟国のユーシズ魔導公国から魔道兵団が増援として到着するが、これだけでは巨人への備えとしてはあまりに少ない。


“星月巡り”一行は、動き出した。



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「ヴァイスの王様!」

「おお、ようやく会えたな。お前の兄貴のことは残念だったが…俺も、同じく腹を斬りたい気分だよ」

「まさか、王様も死ぬつもりじゃないですよね?」

「死んでしまえば楽なんだろうが、それはあまりにも無責任だ。俺は最後まで戦うぞ」

「わかりました。それなら相談です。ルーヴは今まで、たくさんの国を旅してきました。もしかしたら、助けてくれる人を連れてこれるかもしれません!」


「なので、予算としてくらい下さい!」


「ほう、あれだけの巨人が胴元だ。賭け金は青天井。面白くなってきやがった…!」

―ルーヴ=デルタ=ヴォランティスと”導きの王”ヴァイス=ハーヴェスの会話より

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魔法や魔法の品物、飛行騎獣などあらゆる移動および通信手段、そして十分な金額の予算を利用し、彼らは世界中から戦力を集める。



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「これが契約書です。報酬としては十分頂けそうだ。我々は全ての戦力、私を含めて8騎の竜騎兵を提供しましょう」

「竜騎兵団だけで戦えというなら断っていましたが、ね」

「作戦は理解しました。私も、それなら勝算はあると思います」

「小規模ながら迅速な輸送、高空からの通信による地上部隊の統制、遠距離攻撃を中心とする遊撃。これらは統制された竜騎兵がもっとも得意とするところです」

「我らの王が自慢する、最強の兵科の真価を、皆さんに存分にお見せしますよ」

“天翔ける流星”トゥーマ=ゼイル

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「イェキュラの遠距離通話通話のピアスかと思いきや、あなた達かい」

「あの”西の魔女”がマージンをほとんど取らずに話を回してくるとは、よほどの状況ね」

「それが作戦……私は軍事は素人で勝算は読めないけれど、イェキュラが乗る目になら、賭けても良いわ」

「残念ながら再建中の飛空艇団は出せないけれど、条件に合う戦力は派遣しましょう」

「アルショニアへの貸しをここで返してもらうのが、良い投資となりそうね。彼らが持つ魔動機砲兵団を、私の飛空艇で送り込むわ。7日以内に」

―”マナタイトの魔女”キルケー=ランカスター

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ランドール地方の”勇者王”エルヴィンが抱える、現在の世界で唯一の有人航空戦力である竜騎兵団に、魔動機術が普及するドーデン地方から纏まった人数の魔動機砲兵マギテックの集団とユーシズの魔道士兵ソーサラーの集団たちを指揮してもらうことで、有効な戦術レベルの魔法攻撃を巨人に対して与える体制を取る。



そして、巨人を押しとどめる地上戦力はハーヴェス王国が先頭に立つ。



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「ヴァイス王、お待ちください!御自ら最前線に立つその勇気、臣下として敬服致します」

「が、全軍の先鋒として世界の危機に立ち向かう誉れは、我が騎士団にお与えください!」

「亡き妻は常々申しておりました。国と民を守れぬ王侯貴族に価値はないと。今思い返しても、あの時、我々にその価値はなかったと、顔から火が出る思いです」

「その不名誉を、今ここで雪がせて頂きたく!」


「もちろん我々の多くは死ぬでしょう。しかし国王陛下を始め皆さまには、既に巨人に蹂躙されている辺境の地を立て直す役目があります。未来に繋げていかれる礎となれるのであれば武官の本懐」

「未来を作る側の者たち…入団3年未満の者、結婚2年以内で嫡子がいない者、未婚の15歳以下の子息がいる者は強制的に外します」


「………なにとぞ!」

―”護国の騎士”シン=シャイターン

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こうして、"終末の巨人"に対する陽動戦の布陣を整えた。すべては、彼らが戦っている間に巨人の内部に侵入し、制御システムを破壊して勝利するために。


“星月巡り”一行と”最後の聖戦士”オルエン=ルーチェは、”終末の巨人”と連合軍の戦闘が開始されてから機を見計らい、飛行手段を用いて巨人の内部に突入する。



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「ルーヴだけ飛ぶ手段がなくて、お手間かけます!そしてギリギリでアレなんですが、オルエンさんにお願いが!」

「……離陸するわ」

「私と、友達になってください!」


金瞳の女は、少しだけルーヴを驚いた顔で見つめたが、反応はそれだけだった。


「あなたが神官プリーストのこと、嫌いなのは、人々の中に無理やり神様が降臨して、好き勝手やり出したのを見て、気に入らないからだと感じたんです。でもそれは互いの理解と、愛の心が、はぶっ」

「……突入するわ。舌を噛むわよ」


―巨人への突入直前、ルーヴとオルエンの会話より

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巨人内部へ突入した一行。地上戦力の損害を少しでも減らすため、まずは脚部の動きを止めようと、制御システムのある心臓部とは逆の方向に向かう。


内部で破壊活動を行う一行を追跡する影があった。彼らを追って巨人内部に入り込んだのは、ランドール地方で一行を捕らえた蛮族連合の幹部、バジリスク・”橄欖石の”ラドンであった。


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「久しぶりだなァ!巨人を止めるのにこんな手段があるとはな、だが、俺様が来たからにはお前らの好きにはさせないぜ!」

「……どちらさんだっけね」

「はぁ?そこのドワーフ、お前はランドールで俺様にとっ捕まってただろうが!あの時は逃げられたが、今度は決着をつけてやるぜ!」

「そんなことあったっけか…や、俺たちも最近周りでとんでもないことが連続で起きてるんでね。マジでいちいち覚えていられないんだ」

「失礼な野郎だ、無礼をわからせてやろう……ん、お前、金目の女!何故こんなとこにいるんだ!?さては俺たちを嵌めやがったのか?」


「……ラドン。あなたは私の敵に決めたわ。あなたのような愚か者は、ここで惨めに死ぬ」

「アンタは油断ならない協力者だが、そこは同感だな!」


―”橄欖石の”ラドンとバル=カソス、”最後の聖戦士”オルエンのやりとりより

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=====中ボス戦闘=====

オニクスバジリスク*1 (”橄欖石の”ラドン)

ガルーダ *1

アラクルーデルプレデター *2

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追跡者の蛮族を撃破し、一行は巨人の中心部へと進んでいく。そこにはオルエンの話していた通り、人であったモノがいた。



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「なあに?オーブレイの言っていた人たちが、やっと来たのね。でもダメよ。もう少し、楽しんでいたいの。世界を曳き潰す感覚を、あと少しだけ味わっていたいわ」

「あの子はどうしたの?イーヴの武器を持っていた、イーヴの魂をもつあの子。最後はあの子になら許してあげても良いと思っていたのに。ああ、あなたドラコは違うわ。武器を持っているだけじゃない」

「あなたはオルエン…ね。ずいぶん姿かたちが変わったのね。それは、私が使っていた杖?もう要らないわ。私のために造り出された禁術の使い方も思い出した。私をぐちゃぐちゃにした忌まわしき存在女神ハルーラはもう、必要ないの」

―”巨人制御装置”<ハルーラ>

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ハルーラの脇に控えていた、オーブレイが造りし魔動機が起動する。

最終迎撃装置<オメガ>と、最終防衛装置<アルテマ>が、臨戦態勢をとった。



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金瞳の魔女は、手にしている朽ちた杖を、諦めたように投げ捨てた。

「こんなものが役に立つなど、やはり藁に縋るものだったか……我ながら、下らないわね」

そして彼女は、人だったモノを正面から見据えた。


「……ハルーラ!」


シガレットがびくりとして彼女の方を見た。魔女とそれなりの年数、争ってきたつもりの彼であったが、彼女のこのような口調を聞いたことがない。魔女はいつも、嘘偽りを並べ、他人を遠ざけていたから。


「あなたが愛したイーヴも、あなたの自由意思を奪ってきた神々も、あなたを利用してきた人々とオーブレイも、あなたが戦った魔神王すらも!もはやこの地上にあなたを繋ぐものは存在しないわ!」

「賢しく誇り高いあなたを壊して来た、あなたが敵と認め復讐するべきものは、ここにはいない!」

「それすらもわからないというなら、最後の仲間として、私が相手になろう!」


その場にいる皆が理解した。”最後の聖戦士”オルエンは、このためにここに来たのだ。彼女は、たった1人の仲間のために全てを敵に回し、全てを犠牲にしてここまで来たのだ。


彼女は腰のホルスターではなく、太腿部の隠しマウントから金属の筒のようなものを取り出す。いや、あれは筒ではなく、銃身の一部だ。聖戦士たる彼女が当然、持っているべきものだ。


「我、地に平穏をもたらすために来たと思うか…汝は”神滅の銃ラグナレク”。世界に、自由を齎すものなり!」


―セッション内、戦闘前の描写より

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===最終戦闘===

巨人制御装置<ハルーラ>

最終迎撃装置<オメガ>

最終防衛装置<アルテマ>

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オーブレイの魔動機は非常に強力であったが、神器を解放した"最後の聖戦士"オルエンの強さはそれ以上であった。しかし、ハルーラには切り札があった。スフバール聖鉄鎖公国の時に見た、星光の環がオルエンを包み、彼女は奈落の魔域へと追放される。



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この追放を逃れる手段は、どうやら無いようだ。空間にぽっかりと空いた昏い穴が、彼女を包み込んでいく。


「スノウ、いやオルエン!」

シガレットが銃の弾丸をリロードしながら、仇敵に声をかける。

「お前が味方だとは思っていないが、お前の目的は、今は俺たちの目的だ。任せてくれ…!」

オルエンは笑った。ハルーラに声をかけた時ではなく、いつものように、他者に不快感を与えるような影のある笑い方だ。

「制御装置を破壊すれば巨人は爆発して四散するわ。せいぜい、死力を尽くしなさい」

「……いつだって、そうさ!」

そうして彼女は、闇へと消えた。


―セッション内描写より

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最大戦力がいなくなったことで形勢が崩れかけるが、"星月巡り"一行も負けるわけにはいかない。ルーヴは、オルエンが残していった朽ちた杖を手にした。



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ルーヴが杖を手に取ると、断片的なイメージが脳裏に流れ込んでくる。慈愛に満ちた聖女としての一面、許されざる恋に身を焦がす女としての面、悲しみに暮れながらも仲間と共に人々の為に戦う神としての面…


「……大丈夫、この杖の持ち主は、苦しみながらも戦い抜いたんだ。目の前の殻の中の妄執は、解放しなきゃ」

「天に夢を。地に平和を。人に愛を!汝は"希望の杖コルヴァーナ"。世界に導引を齎すものなり!」

―ルーヴ=デルタ=ヴォランティス

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長く激しい戦いの末、とうとう一行は巨人制御システムの破壊に成功する。


崩れ行く巨人から脱出すると、山のごとき大きさの巨人は大爆発を起こし、四散した。世界は救われたのか…


巨人の破壊後程なくして、周囲一帯、いや世界全体に、幻想的な「光る雪」が降り注いだ。


それは彼らの勝利を祝うかのような光景であったが、彼らはその雪に秘められたオーブレイの意思をまだ知らない…


そう、世界は救われてなどなく、これより世界は本当の選択の時を迎えるのだ。



第三部 完


最終部へ続く。


【今回の登場人物】

セッション参加キャラクター

ルーヴ=デルタ=ヴォランティス(プリースト10)

バル=カソス(グラップラー10)

ドラコ=マーティン(コンジャラー10)

オリヴィエ(フェンサー10)

シガレット=カルカンスキー(シューター10)



“最後の聖戦士”オルエン=ルーチェ 

種族:ナイトメア 性別:女性 年齢:400歳以上


第二部最終話「遥か雲路の果て」以来の登場。

かつてスノウ=フェリアの名前で”星月巡り”と行動を共にし、タージ探索の折に、蛮族を招き入れ空中都市を明け渡す手助けをした人類の仇敵。

人の自由意思を何よりも尊んでおり、降臨した神々やオーブレイにその意思を奪われ続けていたかつての仲間、”聖女”であり巨人制御システム<ハルーラ>を解放するため、全てを敵に回しながらタージの起動と連動させて終末の巨人を復活させ、巨人を倒す機会を伺っていた。

追ってきた蛮族を歯牙にもかけず巨人制御システムと戦うが、《ハルーラの禁術》によって奈落の魔域に追放され行方不明。いずれ世界に戻ってくるはずだが…?

なお、タージ脱出の時に自身と相対したライエルの師匠、"聖剣の護り手"ヴィオラは、「殺してはいないが、二度と戦えない程に壊した」と証言した。



"導きの王"ヴァイス=ハーヴェス (※公式NPC)

種族:人間 性別:男性 年齢:28歳


前回「メビウスをなぞる」に引き続き登場。

ハーヴェス王国の若き国王。極めて優れた軍略家にして英邁なリーダーであるが、優秀過ぎるが故に能力の劣る者の人事扱いを誤るなど、為政者、政治家としては未だ穴が多い。

"終末の巨人"の跳梁に端を発する国内の混乱を治めきれず、ハーヴェス王国は内乱寸前まで乱れ、多くの優秀な人材を失う結果となった。だが強靭な精神を持つ彼は逃げずに"終末の巨人"との戦いの陣頭指揮を執ることを宣言。援軍の当てを持つ"星月巡り"に巨大な予算を与えるなど、豪胆な面を見せた。

戦後、竜騎兵団を提供した"勇者王"エルヴィン=クドリチュカと会談し、何らかの政治取引を行ったようだ。王都前で"終末の巨人"を打ち倒したものの、地方部を破壊されたハーヴェス王国の復興は、まだまだ道半ばだ。



"護国の騎士"シン=シャイターン

種族:人間 性別:男性 年齢:28歳


前回「メビウスをなぞる」に引き続き登場。

ハーヴェス王国の騎士団長。政治的味方が少ないと噂されるヴァイス国王の一の忠臣を任じる。だが、それゆえに自身の政治的立場が自縛され、ハーヴェス王国の内乱時にはほとんど自分の意志で動くことが出来なかった。妻の死を引き換えにした説得によって自身の過ちに向き合い、その汚名を返上するため自ら死地に飛び込むことを志願する。

結果として騎士団には大きな損害が出たが、彼自身は生き残った。戦後は、自身の所有していた未解放の聖戦士の神器、"蒼玉の剣"グレイプニルを"星月巡り"一行に託すと、自身は騎士団長の職を辞して、辺境の名もなき人たちを助ける冒険者となる誓いを立て、旅立っていった。


(GM注:本当は今回で死亡するつもりで描写していましたが、プレイヤーの嘆願で生き残る結末に変更しました)



“終末の巨人”


タージ起動と共にコルガナ地方の地中から現れ、ヴァイスシティやセブレイ森林共和国、スフバール聖鉄鎖公国、マカジャハット王国、ハーヴェス王国といった国々を恐怖に陥れたオーブレイが作りし最強の魔動兵器。

その稼働には人族の魂が利用されており、オーブレイやオルエンのかつての仲間、聖戦士のひとり”聖女”ハルーラの魂が組み込まれていた。

巨人に組み込まれていたハルーラは歪み、人としてまともな感覚はほとんど残っていなかったが、かつて愛していた聖戦士のひとり、"聖騎士"イーヴの魂の輪郭を感じられるようなものは認識していた。イーヴの子孫であるイオが巨人を退けることが出来たのはこのため。

また、ハルシカ商協国を無視してウルシラ地方へと向かったのは、かつての自分が生み出した禁術を代々伝えていた一族の末裔、リジヤ=アルゲエーヴァの存在に反応したためであった。

巨人制御システムを破壊されたことをトリガーに世界規模の儀式魔術が発動し、世界に光る雪を降り積もらせる。




【次回予告】


終末の巨人を倒した後に、世界に降り出した光る雪。


それは世界に静かな変革を齎す、賢者の遺産であった。


真実が世界に混沌と希望なき生を


欺瞞が世界に平穏と緩やかな死をそれぞれ与えるのならば、


人はどちらを選ぶというのだろうか…


神に見捨てられた獣たちは、大いなる魔道の名のもとに


世界を救うための血塗られた革命を望むか否か。


ソード・ワールドRPG最終部第1話「シュプールに花束を」


冒険者たちよ、剣の加護は汝と共に。





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