第123話 あなたのおかげだよ。

 ——姉さん! 魔王さまが目を覚ましそうだよ!


 デュークの声。


 うん。良かった。


 じゃぁ急いで出ないとね。



 抱きかかえていた白銀の毛玉は猫みたいな形になっていた。


 そっと下ろすと可愛く寝返りをうって伸びをする。


 あは。かわいい。


 このままずっとみていたい気もするけどだめだめ。急いで戻らなきゃ。




 実はあたし、今猫の姿で魔王さまのお布団に潜り込んでる状態で。


 しっかり心をつなげるのに魔王さまに触れた状態でいたかったんだけど、ベッドに寝てる魔王さまを触ったままあたしの意識を送り込もうと思ったら、なんだか添い寝してるみたいになっちゃいそうで。

 ちょっとそれはまずいかなぁと思って猫の姿に戻ることにしたの。

 猫ならお布団の中に入ってても大丈夫かもだしね?


 でも、魔王さまが起きるまでにはなんとか出なきゃね。いきなり猫がお布団にいたらびっくりするかもだし。



 来た時より早めに飛ぶ。人の心の中ってその人にもよるけど、なんだか魔王さまの中は濃いから空間がねっとりした感じであんまり早く動けないのだ。


 なんとか自分のインナースペースの入り口にたどり着いて。


 ちょっと振り返って後ろを見ると。



 猫の姿だった魔王さま、人の姿になってこちらに頭を下げてる。


 あう。



 ま、いっか。


 そんな頭を下げられるようなことをした自覚はなかったけど、やっぱり感謝されるって嬉しいね。



 あたしはちょこっとだけ気分よく、自分のインナースペースの中に帰ってその接続を閉じた。


 ——うん。よかったね。姉さん。


 ——あは。ありがとうデューク。


 デュークとの接続はまだ残ってるからあたしの心の動きもダダ漏れだね。


 うん。でも。いっかな。


 デュークだし。




 自分の猫の身体に帰ったあたしはもそもそっとお布団から出ようとしたんだけど。


 うきゅ。


 なんかキャッツさまの両手が邪魔をする。


 あたしの顔から身体から撫でまわされてぎゅっと掴まれた。


 お布団の端がが遠いよ……。


 キャッツさまの胸の上に抱かれたあたし。手が背中を撫で回して、て……。


 あう。だめ。そこはちょっと弱いの。


 なんだか喉からゴロゴロ音が出ちゃう。


 ふんわりとお布団が持ち上がってキャッツさまのお顔が見えた。


「あは。かわいい。ありがとねねこさん。あなたのおかげだよ」


 そう囁くキャッツさまの声が可愛くて。


 あたしは嬉しくて。頭を彼女の両手に擦り付けてにゃぁと鳴いた。

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