第122話 青い勇者。

あの青いのは勇者の残滓? 魔王の心の中で作り上げた勇者? 


外の世界の勇者は確かに帰った筈。


穴も塞がっちゃってるからこちらにはもういない筈、なんだけど。


本当の外の世界の勇者が居るわけじゃないのだけど。




魔王さまが起きないのはこれが原因? かも。





あたしは目の前に迫るエネルギー波をアトラス・ゴットハンドの右手で吸収する。


重力そのものを操作して仕舞えば多少のエネルギーなんてどうって事はないのだけどね。


そのままドラゴンスレイヤーを顕現させ放つ。何万本もの剣が一斉にその青い塊に襲い掛かった。



その青いのはその周囲に位相の壁を張り、高速で回転を始めた。


ドラゴンスレイヤーが奴に届く前にその回転による嵐に巻き込まれ弾かれた。



うん。だめだね。


飛び道具ではダメージを与えるのは難しいとあたしはドラゴンバスタードを握りしめ青いのに急速接近!


袈裟懸けに剣を振る!



ん? 


ちょっとダメージ通った?



青い塊だったその姿がだんだんと人の形に見えてきた。



鬼のような形相のそれ、は、青いカブトに青い鎧。そして青い聖剣。


たぶん中身は本物ではないんだろうけど。


このインナースペースの持主である魔王キャッツの恐怖が作り上げたまぼろしなんだろうけど。


それでも。強かった。




何合も切り合い受け止め。


奴が稲妻を聖剣に纏い上段から振り下ろすのをドラゴンスバスタードで受け止め。


左手のガントレットをブレストアーマーにぶちあてる。


そのままダークネスストームを放つあたし。


青い勇者のブレストアーマーが粉々に砕けたところで、その青い幻影が光の粒子となって消え去った。




残ったのは中心にあるホワンとした白銀の毛玉。


たぶんあれが魔王キャッツさまの心かな。


あたしはその毛玉を抱きかかえて。


そして。


癒しの力を使った。


金色の粒子があたしの周りにあふれ。


そして。その白銀の毛玉を包み込んだのだった。

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