第117話 真皇。

 立髪のせいで大きい顔がもっと大きく見える。もうものすごい圧がすごいその男の人に睨まれてあたし、ちょっとふにゃぁってなったけど。


「ごめんなさい。あたし、何か変なこといいました?」


 そう恐る恐る聞いてみた。


 魔物とかそういうのは怖くないけどやっぱり一番怖いのはこういう人の感情かにゃぁ……。


 ちょっとしょぼんと耳が垂れる。


「んー。お嬢ちゃん、奥で話聞かせて貰ってもいいかな?」


 と、ライオンさん、いいかなって聞いてるけどこれ、目が強制してるよ。


 うきゅう。


 あたしとデュークはそのライオンさんに連れられるままに奥の部屋に通された。




 ちょっと豪華めな黒革のソファーに座らされたあたしたち。お尻がすっかり埋まっちゃう柔らかいソファーにはまり込んじゃうと、ライオンさん対面に座って言った。


「俺はここのギルド長をしてるレックスだ。嬢ちゃんたち、どこから来た? この辺りじゃ見ない顔だな?」


 そうギロッと見る目がやっぱり怖い。


「ぼくたち、実は別の世界からかきたんです。神様に頼まれて」


 あたしが言葉に詰まってたら代わりにデュークが話し出してくれたけど……、ちょっとデューク、神様ってそんなこと……。


 あたしが一人でわたわたしてるとデュークが手をぎゅっと繋いでくれて。


 心の中の声が聞こえて来る。


 ——いいのいいの姉さん。俺に任せて。


 ——だって、デューク……。


 ——そもそも姉さんは単刀直入にすぎるんだよね。話が聞きたいならもうちょっと回りくどくても相手の興味を引かなきゃさ。


 ——もう、デューク、ひどい……。


 もういいもん。ここはデュークにまかせるよ。



「どういうことだ? お前たち、何者だ?」


 訝しんでるって表情でギロッとこちらを睨むレックス。


 ふにゃぁ。


「この世界を創世した神様ですよ。その方に頼まれたんです。最近開いた変な穴から来た別の世界の人間の事を調べるようにって」


「真皇様か⁉︎ 俺たちの事を見ててくださっているのか? ああ……」


 ライオンのレックスさん、ちょっと目を瞑り両手を合わせ天を仰ぐ。


 でも、神様もまおうさま?


「えっと、神様の事もまおうさまっていうですか?」


 あたし、おもわずそうぼそっと口に出してた。


「ああ、お前さんたちは別の世界から来たと言ったな。それなら知らないのも無理はない。しんおうと書いて真皇まおう。この世界では創世神の事をそう呼び称えているのだ」


 あうあう。そうなんだ。ちょっと恥ずかしいかも。


 あたしがその創世神だなんていうのは喋っちゃダメだよねやっぱり。


 ——イメージ崩れちゃうからやめておいた方が良いかもね。


 もう、デュークったらひどい。

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