第73話 ノワ。

 扉を抜けるとそこにはまた扉。


 実はこれ、もう一つあるエレベーターだった。


 ここ、最下層にあるだだっ広いホールはまあブラドが暴れてもいいくらいの広さがあったけど、そのぶん岩盤も強固になっていて。


 たぶん常時設置型の魔法障壁で護られてるよねあれ。


 ほんとここは遺跡っていうより現在も稼働中の何かの基地?


 あたしは詳しく調べなかったけどきっとノワなら詳しそう。


 にしても。


 こんな奥に引きこもったら普通の人は会いに来れないじゃない。


 大丈夫かなぁノワ。


 ほんとちゃんとご飯食べてるのかな? 心配。




 あたし達がエレベーターに乗り込むと、それは自動的に上昇を始めた。


 まあ、もうこの先行くとこ一か所しかないしね。


 上昇が止まり、目の前の扉が開く。


 ここから先は廊下に扉がいっぱいある迷路みたいな場所。


 前回来たときはあんまり時間が無かったのもあるけど、部屋を少し見ただけで帰ったんだっけ。


 人はいないのに人がいたんじゃないかって痕跡だけ残る部屋。


 ホテルの部屋をちゃんと清掃に入らなかった、そんな雰囲気の部屋がいっぱいあった。


 うう。


 これ全部見ないといけないのかな?


「ノワ、どこにいるのかな……?」


「おんなじような部屋がいっぱいありますね……」


「ワタシも、半年前くらいでしたっけ、ここに篭ってるよって連絡貰っただけなんですよね」


「連絡? どうやって?」


「鳥? でしたね。伝言鳩。魔具の一種ですけどご存知ありません? まあここ十年で流行ってる魔具で、マナで鳥の姿を形作って目的地まで飛ぶんですよ。で、吹き込まれた伝言を喋るんです」


 ふーん。相手の魔力紋頼りに飛ぶのかな? それ。



 なら。



 あたしは自分の魔力をこのフロアいっぱいに広げてみることにした。


 ノワ、あたしの魔力紋に気付いてくれないかな。


 前の時は気がついてくれたっけ。


 今度も……。




 フロアの端まで魔力が行き渡ったところで。


 奥からこちらへむけて移動してくる反応があった。


 うん。


 走ってくる?


 間違いない、この魔力紋、ノワのだ!


「ノワ、見つけた。こっちに走ってくるよ」


「流石ですねえ。ノワ、ラギレスに気がついたのね」


 そうニコニコとわらうレイチェル。




 だんだんと近づいてくる。


 ああ、あともうちょっと。


 廊下の角の向こうにいるのを感じる。


 あは。



 ほら。


 彼がそこまで来た。

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