第56話 レイチェル先生。
びっくりしているのはあたしだけでみんなは普通。
坦々と授業が開始された。
(そりゃあ、誰もレイチェルさんの顔なんて知らないしね? 勇者パーティのメンバーってことも知らない人多いんじゃない?)
と、レイア。
そっか。
そうだよね。
もう十何年も前の話だもんね。たぶん今でも有名なのはラギレスとノワールくらい?
に、しても。
どうしてレイチェルがここで教師なんかやってるのかは謎。
今じゃきっと教会の上の方の人になってるはず?
実力も血統も申し分ない。前教皇のご息女だったよね? たしか。
「魔法を使う上で一番大事なのが自身の中にあるマナのコントロールなのですが、それについては去年の座学と瞑想の授業で基礎ができていると思うので、今日からは実践を交えながら講義を進めていきます」
そう、生徒を見渡しながら堂々と話すレイチェル。
うん。こういうところはほんとすごいな。子供の頃から大勢の大人の前で話すことに慣れてたから。たぶんいきなりの先生なのだろうに、ぜんぜん場慣れしてる感じ?
「魔法に、火、水、風、土の四元素、光、黒の二種類の要素があるのは既に座学で習っているとおもいます。今日の1日目は火魔法について実践していきましょう」
そういい右手の掌を上に掲げるレイチェル。
ぼわっとその手のひらの上に火が灯った。
聖属性、光魔法の達人であるレイチェルだけど、別に他の魔法が使えないわけじゃない。
まああたし並みは難しいけどね?
火魔法は、物質の化学変化に干渉する魔法。
炎だけでなくありとあらゆる化学変化に、そしてそれはそれは通常の化学変化だけでなく物質の原子、そして素粒子までをもコントロールする事が可能。
実は世界の仕組みを知れば知るほどそのチカラは大きな力になる。のだ。
「こうして実際に火を発生させるのが基本です。じゃぁ一人ずつやってみましょう」
レイチェルが指名した生徒から順番に火をおこしていく。
うん。まあ、これはできるよね。
途中、どうしても火が出ない生徒がいたけどその子は個別にあとでレイチェルが教えることになった。
たぶん、このレベルならなんで火がおきるのか? なんて理解してなくても感覚でできる。
っていうか、感覚で魔法を使ってる人ってきっと多いんだよね?
ここでは科学の授業なんてものはないし。
「じゃぁ最後はレイアさん。あなたには期待してますよ? ぜひ全力の炎を見せてくださいな」
え?
そんなの無理?
そんなことしたらこの校庭一帯が火の海になっちゃわない?
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