第2話 ねこになっちゃった?

 薄暗い場所。


 最初に意識を持った時、そこには大きいもふもふがあった。


 あたしはその大きいもふもふにすがりつき、お乳をむさぼる。


 おおきいもふもふはあったかく。あたしは安心して眠った。




 次第に、周りにあたしとおんなじちいさいもふもふがいるのに気がついた。


 あたしを入れてちいさいのは全部でいつつ。


 おおきいのがおかあさん。ちいさいのはあたしのきょうだい。


 うん。


 おかあさんのお乳をむさぼり、そしてみんなで丸まって寝る。


 しあわせ。


 そんな感情が自分の中に湧いてくるのがわかる。




 しばらくはそんな感じで。


 お乳を飲んでは寝て、飲んでは寝て。


 おかあさんが身体を舐めてくれるのが嬉しくて。


 そして。


 うっすらと周りに光が見えるようになった頃、やっとあたしは自分が何者で、そしてここがどこなのかを理解した。




 あたし、江藤遥香。

 日本人、だった。


 ごくごく普通の人生で、ちょっとだけおはなしが好きで、自分でもおはなし書いたりしてたっけ。


 猫が好きでもふもふが好きでそんなお話をいっぱい読んで。


 高校を出てから地元のちいさい会社に事務員として就職して、ほんと普通に過ごしてた。


 彼氏もいてもうじき結婚かなぁとか期待してたまだ二十代前半。あっさりと流行り病で死んじゃって。




 で、次に気がついたときにはファンタジーの世界。


 ああ、あたし無敵チートの主人公? そんな感じの異世界転生してて。


 実際王国の公爵令嬢だったあたしは国随一の聖女と謳われ、また攻撃魔法にも長けた最強の魔法使いと呼ばれ。


 国の危機、世界の危機にその世界を救うために勇者パーティの一員に抜擢され、魔王退治に奔走したのだ。


 東に魔王の軍勢が現れたと聞けば東にゆき、南に現れたと聞けば南に、西だと聞いたら西に行く。


 そうやって転戦していううちにとある『穴』を見つけてしまう。


 その、魔界と繋がる穴を潜ったあたしたちは、そこで魔王と戦い。




 結局魔王は倒したけどあたしも命を落とした。




 今、これはどうやら3回目の人生。


 ううん。これは、人ではないよね。


 あたし、ねこになっちゃった?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る