モリアミ

曰く、その山には鬼が住み着くという。


梺の村は静まり返り、人の目は皆怯えている。

「鬼が出たと?いつ頃だ?」

「すると貴方が討っ手ですか?7日程前に成ります。若い者が3人喰われてしもうた……。」

この老人は長だろう。

「儂は今から山に入る、戻ることは無いだろう。7日待って鬼がまだ出るようなら、直ぐに知らせをやれ。49日後に見極めの者が訪れる。」

老人は何も言わず頷いた。手順も代々伝わっているのだろう。


山には中腹に洞があり、其処に鬼の住み処がある。洞には血の臭いが漂っていた。そして、その奥で黄金色に光る目が餌を待ち構えている。

「&#%∥~~~~っ」

其れは異様な音で吠える。

其れは餌に向かって飛びかかる。其れは餌に覆い被さって動かなくなった。餌は其れの下から這い出し、血濡れのまま、洞の奥に崩れるように座った。


倒れた鬼の体から、何かが滲み出ている気がした。そして、滲み出た何かが自分の中の、新鮮な殺意と混ざり合って行く気がした。体が冷えて行くのが判る。酷く眠い。ふと、村の者の、あの怯えた目を思い出す。

「次の鬼が顕れるまで、生きてる者も在るまい。」

そう思うことが、せめてもの慰めであった。


其れが目蓋を閉じる刻、其れの瞳は黄金色に輝いていた。

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