未波編
ノックが聞こえた。
「失礼します。」
「何だ、クリーム。もう仕事が終わったのか。」
「いえ、違います。」
「じゃあ、すぐに戻れ。」
「マスター!侵入者がいたんですよ。」
「ここには俺や未離が許可しないとは入れないはずだが…。お前、言い逃れまでするのか。またお仕置きが必要だな。」
「ほ、本当です。ほ、ほら、入ってください。」
「失礼します…。あっ!」
「…!お前、とんでもないやつを連れてきたな。」
「あれ、有間じゃないの!元気にしてた?」
「あ、ああ。お前どうしてここに来れた?」
「ある理由で歩いていたら、未離ちゃんが二人いて、びっくりしたけど連れてきてくれたよ。」
「ちなみにどんな未離だった?」
「う~ん、いつもの甘えてくる未離ちゃんといつもより明るい未離ちゃんかな。」
「…。分かった。で、なんでここに来た。」
「私、男の人にふられてね。落ち込んでいたところをミナっていう人が助けてくれたの。お礼をしようと思って、探したけどいなくて。未離ちゃんに聞いたらここにいるって案内されたの。」
「…。少し待っていてくれ。…エクスバース!」
「何だ?」
「今すぐミナを探してくれ…。」
「少しこちらとしても忙しい。後にしてくれないか?」
「俺の顔を見てみろ。それを許すと思うか。」
「…。分かった。少し待て。………………。今はミラの部屋だな。有間がなぜそんなに怒っているか知らないが、あまり力を使うんじゃないぞ。」
「分かっている。ありがとう。」
「クリーム、ミラの部屋まで案内してやれ。」
「はい、承知しました。」
二人は部屋を出た。
「まだ名前聞いていませんでしたね。マスターとどんな関係ですか?」
「うふふ、私は未波遥。有間とはね、孤児院の同期で相部屋だった。」
「へぇ、私はクリームと申します。マスターの従者をしています。マスターの過去とかも知っていたりしますか?」
「うん、たくさん、ね。一時期は同居もしてたから。」
「聞かせてもらってもいいですか?」
「うん、そうだね。私は小さいころね、父親から虐待を受けてたんだ。暴力だったり、性的なものだったり…すごくつらくて、気づいたころには男性に対して恐怖を抱くようになってた。そこで父親が私を捨てて孤児院に引き取られた。そこで相部屋だったのが有間だったの…」
最初、私は有間に対しても恐怖があった。でも、彼はおとなしかった。いつも本を読んでいた。そこで勇気を出して声をかけたの。
「あ、あの…!どうしていつも本を読んでるの?」
「…人が嫌いだから。」
「私も男の人嫌い。同じだね。」
彼は当時の私からはすごくかっこよく映った。
「どうして人が嫌いなの?」
「人はすぐに我欲のために動く。俺も力のより強い男性は特に嫌いだな。」
「私、男の人は嫌いだけど、あなたのことは大好きだよ。」
「やめておけ。俺はそんなかっこいいもんじゃない。」
そして、ある程度の年齢になって二人とも孤児院を出るとき、私は彼にお願いした。
「私と一緒に住まない?私これからも有間と一緒にいたい。…できれば結婚したいなぁ、なんて。」
「一緒に暮らしてもいいが、結婚は…そうだな、お前が他の男性としっかり付き合えるようになれば考えてやる。」
今だからわかるけど、この言葉は私の男性恐怖症を治そうと配慮してくれてたと思う。
あの日、私たちの生活が変わった。
「未波…。大切な話がある。」
「なぁに。」
「この子も一緒に暮らさせてくれないか?」
そこにいたのは白髪の少女、そう未離ちゃんだった。私も妹が増えたみたいで嬉しかった。でも、暮らしていくと私は必要ないようになっていった。そして私は自立したの…。
「もちろん有間の言ってくれてたことは忘れていないし、今でも好き。でも彼には未離ちゃんがいる。私の居場所なんてなかった。ふふっ、でも諦められなくて今でも婚活中。」
「二人にそんな過去があったんですね。…あっ、そろそろ着きますよ。」
扉を開けると、そこには…。
「マスター!」
「どうした?!」
有間が駆けつけた。
そこには末無に抱かれた未波がいた。
「…おい…!エクスバース!」
「何だ、そんなに恐い顔して呼んで。…。私は悪くないからな。まだ登録作業中だったんだ。未無を探しても体の方の情報しかないから、ミナか末無しか探せない状況だ。」
「分かった。十分に理解した…。」
エクスバースは有間から沸き立つ見たことも無い程の怒りに恐怖を抱いていた。
夕方になって、未離とエクスバースが帰ってきた。
「ただいまぁ!」
玄関を開けた瞬間、二人をロボットアームが捕らえる。
「へ?なんで!エクスバースちゃんでしょ!放してよ!」
「…有間が見たことも無いくらいにお怒りだ…。私は知らないがお前たちが何かしたことは分かった。だから捕らえた。私がお仕置きにならないようにな。」
「よくやった、エクスバース。お前は今回おとがめなしだ。」
「どうして?お兄ちゃんが私はともかく未離ちゃんをお仕置きなんて…。」
「じゃあ、この人に見覚えないかな。」
出てきたのは末無と未波だった。
「知り合いにお前たちが一緒にいるところを見られると不審がられる上に、なんで未波をこっちに呼んだ?俺に一切聞かなかったから余計にアウトだ。」
「「はい、反省してます。」」
「起こってしまったからには遅い。後でお仕置き決定。未離がどう頼んでも今回はだめだ。」
そこに未無と末離が帰ってきた。
「何やってんだ…。」
「ほら未波、お前を助けたやつの本当の姿だ。」
「何言って…、お前は!」
「…。同じ女の子だから慰めてくれて嬉しかったのに…!」
「ち、違うんだ!そんなつもりじゃ…。」
「…こんな、こんな!」
「うっ…!」
「こんなかっこいい人だったなんて!」
「は?」
「未無兄ちゃんがかっこいいだって!クスクス…」
「笑うな、末離!」
「ふふっ、こんなかっこいい人、人を気遣ってくれる心遣い…。有間、この人だったら正式に付き合えそうだよ!」
「ああ。よかったな、未無。」
「姉としても未波さんにもらってくれると嬉しいよ。あの子こういう付き合いにはめっぽう無関心だから。」
「お前たちまで…!俺は絶対嫌だからな!」
「ヒューヒュー、おめでとう!」
「そんな状態のエクステラまで…。俺はただ善意で助けただけだ。」
「そこがかっこいいの!有間にも引けを取らないほど気に入っちゃった。」
そんなこんなで騒がしい状態が続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます