10:Lost×Memo

「受付やってた子の住所が分かったぞ!」

 先輩から再び通信が来た時、男達は港に到着していた。

「先輩、その住所をゆっくり読み上げて下さい」

 先輩が読み上げる住所を警備員がタブレット端末に入力する。

「ここ……、雑居ビルの一室ですね。人が住んでるとは思えないです……」

 住所を検索した警備員が言う。

「その部屋の中は見れますか?」

「えーっと、あ、カメラが数台ありますね。繋げます」

 タブレット端末にカメラの映像が映し出された。

 部屋の中はやはり何もない。

 先程のねぐらと違って、こちらは本当に人の出入りが皆無のようで、蜘蛛の巣なども多い。

「……、この住所を使って就職している人が他にもいるかもしれない」

「本部の方で探させます!」

 別の警備員がすぐに本部へ連絡する。

「ついでに、その住所も調べましょう。何かあるかもしれません」

「本部から2名送るように手配します」

 男は港を見る。

 工業用の港だ。

 物資などを多く積んだ輸送用の宇宙船が発着するため、広大なコンテナ置き場が広がっている。

 ここをどう探せばいいのか……。

「広過ぎてどうすればいいか……」

「まずは港の管理局に向かいましょう。利用する場合は手続きが必要です。出航時間で検索を掛ければ引っ掛かるかもしれません」

「そうですね、行きましょう」



 テロリスト達が使ったと思われる船は、予想以上にあっさりと特定出来た。

 古い小型の輸送船だったらしく、産業廃棄物の輸送という申請だったようだ。

 積み荷であるコンテナの中身も検めたが、特に不審な点はなかったらしい。

「ゴミの中に核爆弾を隠したのか……」

「全部のコンテナをひっくり返す訳にもいかないからですね」

「検疫を行うのは、専門の業者がいる。そこにも関係者がいた可能性もある」

 タブレットから支部長の声がした。

「支部長!」

「こちらで出来る事は全てやった。そっちはどうだ?」

「何も手掛かりがありません。とりあえず、検疫を行った会社に今から送る住所で社員登録している人物がいないか調べてもらっていいですか?」

「分かった。その輸送船を所有している会社なり人物も洗おう」

「お願いします」

「爆発の予測時間まであと1時間もない。ある程度で切り上げて帰ってこい。が開いた後の備えで、少しでも人手が要る」

「了解」

 思い当たる場所は全て回ったつもりだが、やはり何の手掛かりもない。

 分かったのは、男や武装警備員達が考えていた以上に、テロリストは日常に入り込んでいたという事だ。

「動き始めた今、止める手段もない……」

「仕方ありません。とにかく、一度支部に戻りましょう。爆発を止められないなら、その後の戦争を止めるしかないです」

「そうですね……」

 男達は再び車に乗り込む。

 そこでふと思い出した。

 メモにあったはなんなのか。

 煙草屋の名前があったので、煙草屋の電話番号だと思ったが、本当にそうなのか。

 男がメモを取り出し、その番号を見る。

「おかしい……」

 その煙草屋は男も利用する店だ、場所も知っている。

 しかし書いてある電話番号は、その店のある区画へ繋がる局番から始まっていない。

 この局番は、シェフの女が住所として会社へ申請した区画へ繋がるものだ。

 つまり、あの誰も使っていない雑居ビルの一室の番号ではないだろうか?

 男は咄嗟にその番号へ通話を掛けた。

 呼び出し音の後に独特の音が鳴る。

 通話が自動で転送されたのだ。

 それが3回程続いた後、通話が繋がった。

「も~、遅かったじゃない。待ちくたびれたわ」

 それは紛れもなく煙管の女の声だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る