最強の圧縮魔法、最強過ぎて世界が簡単に終わってしまいます。

新名天生

最強の圧縮魔法、最強過ぎて世界が簡単に終わってしまいます。


 「お前が最強だって、うははははやってみろよ!」

 そう言ってまた僕の前に屈強の戦士が現れた。

 こんな所まで……僕は何処に行っても狙われる。そんな運命なんだ。そんな宿命を背負ってしまった。


 今から数年前100年戦争をたった一度の魔法で終わらせた僕。

 終わらせた所か国が、土地が一つ丸々無くなってしまった。


 まだ小さな子供だった僕はその意味が、わかっていなかった。


 それまでは僕が魔法を使うと、皆が喜んでくれた。


 でも……僕はあれから、国を滅ぼしてしまってから……畏怖の対象、恐怖の対象となった。

 魔法発動直後僕は自分の魔法に巻き込まれた。

 味方も敵も、仲間も敵も、全てが消えてしまった。

 僕の魔法で……全てが……。


 だから今はこうして、誰にも迷惑を掛けずに、一人山の中で田を耕し、そっと暮らしていた。


 でも、時が過ぎ、伝説だけが残った。

 最強の魔法使いが居ると言う伝説が……。



「ようやく見つけたら、なんだまだガキじゃねえか」

 僕の2倍はあるだろう身長、そして僕の身長と同じ大きさの剣をぐるぐると振り回大男。


「おじさん……帰った方がいいよ」

 僕はそう言った……決して煽ってる訳じゃない。僕の魔法は手加減できない。


「ほう、この俺相手に震えもしないとはな、俺の名前はマクダーウエルだ、マスター、マクダーウエル、覚えておけ」


「なんだか……旨そうな名前だなあ」


「お前がジープウイン、死神の超新星か、真名を聞かせろ」


「……僕に勝ったら──聞かせてあげるよ」

 僕はそう言うとその大男のマクドから逃げる様に走り去る。


「は? て、てめえ逃げるのか?」

 大きな剣を振りかざすマクドは、突然の僕の行動に呆気にとられている。

 そう、僕は逃げたのだ……既に魔法は発動している。


 決闘はどちらかが名乗った瞬間から始まる。

 僕は奴が名乗った瞬間魔法を発動し、そして──逃げた。

 ただし僕は奴から逃げた訳じゃない、自分の魔法から逃げたのだ。

 そして発動した瞬間既に勝負は付いていた。


「て、てめえ! ま、待ちやがれ!」

 大男がそう言った瞬間、目映いばかりの閃光が辺りを覆った


 そして……。


『ガーーーーーーーーン』

 閃光から少し遅れて音が、さらに遅れて爆風が吹き荒れる。

 僕は走って逃げていたが、間に合わずその爆風に吹き飛ばされた。


「──ぐわっ、畜生……大きすぎたか……」

 草原の上で数回転げた後、男のいる方を、いや、いた方を見つめた。

 そこには何も残っていない、男も草木も、何も……。

 

「──鉄分が多かったか……遅延発動のタイミングも早かった」

 自分の魔法は自分には効かない。

 当たり前だ、炎を手から出す度に火傷していたら、誰も使えない。

 でも、吹き飛ばされた石や、破片、爆風等の二次産物は別だ。

 僕はそれから逃げたのだった。


 僕はゆっくりと立ち上がり、小さなクレーターが出来ているその男がいた場所を見つめた。


 僕が使った収縮魔法が発動したその場所を……。


 僕は奴が名乗った瞬間、奴の足元の小さな小石に魔法をかけた。

 遅延させて発動する様に……。

 

 小石は魔法により圧縮し、そして崩壊した。

 崩壊する時に凄まじいエネルギーを放出して辺りを吹き飛ばす。


 小さな小石一つでこの状況を生み出してしまう……やはり僕は、僕の魔法は危険過ぎる。

 国を滅ぼした時は、岩を一つ圧縮させた。


 【超新星スーパーノヴァ

 これが僕の圧縮魔法の名前だ……。

 【死神の超新星】……これが僕の通り名となった


 僕は物質を極限まで圧縮出来る。

 ただし出来るのは自然界にある固体だけ、水分や生き物には出来ない。

 

「また……聞けなかったね」

 そして目の前で、また一つの命が消えた。

 でも僕には何の感情も無い、既に数万、数十万人の命を奪ったのだから……。


 僕のフルネームを聞いた者はまだいない。

 

 僕の名前を聞きに来た者は、皆、跡形もなく居なくなってしまうから。

 


 


◈ ◈ ◈



「これをクシャってすれば良いの?」


「そうよ? 出来る?」


「うん!」

 僕の圧縮魔法、初めの頃は柔らかい物を潰すだけの物だった。

 野菜や紙で作った風船を手のひらで潰す様になるだけ。


 でも幼い僕が魔法を使える事に皆驚きそして色んな人が僕を誉めてくれた。


 僕はどんどん上達していった。もっと誉めて貰いたくて。


 でもある時それは起こった。

 

 いつもの様に魔法を使い、小石を潰そうと魔法を使った。


 暫く何も起きなかった。僕はさらに集中し魔法を放った。硬い物は無理かと思ったその時、石は収縮し、火を放ちそして、木っ端微塵に砕け散る。


 そしてその側にあった石の破片が、僕の頭に直撃した。


 傷は深く、一時は命の危険もあったが幸いにも僕は回復した、


 そしてその事を一部始終見ていた者が一人いた。


 リンカーネル魔法部隊隊長、僕は彼に見出だされ、わずか8才で軍の魔法部隊に入隊し、彼に師事する事に、そしてこれが……僕の間違いの始まりだった。


 僕はさらに魔法の能力を高め、威力をまして行く。

 リミッターが外れるかの様に……その力を解放させる。

 子供だったから、それがどうなるかわからなくて。

 そして僕は国の最終兵器になった。


「自分が巻き込まれない為に、魔法を遅延発動させろ」

 リンカーネル隊長の教えを受け、遅延発動の仕方を覚えた。


 魔法での爆発自体に僕は巻き込まれる事は無い。

 ただし副産物、爆発により周囲の物が高速で散乱する。

 僕はダメージを避ける為に、逃げ足を強化し、さらに防護服を着て魔法を発動させる。


 僕は戦争を終わらせる為だと、そう言われ。それを信じ言われるがままに魔法の力高めて行った。

 そして、どんどん大きな物を、ある程度の距離から発動出来る様になる。


 そして遂に実戦の時が来た。


 相手は数万の軍勢、僕は命令され微かに見える岩を狙って遠くから魔法を発動させた。


 岩だけだったら良かった、それだけなら相手を殲滅させるだけだった。


 その岩には恐らく多くの鉄が含まれていた。


 いや、今思えば全ての爆発は岩の中にある鉄が作用していたのだ。


 鉄は収縮すると大爆発を起こす。


 僕はそれを知らなかった、いや、誰もその事を知らなかった。


 夜空に広がる星、大昔にその星が爆発した事があった。


 学者はそれを【超新星】と言っていた。


 僕の魔法はそれと同じ原理だと、後に知った。


 僕の魔法は国を滅ぼす。世界を滅ぼす。


 そして……この世を滅ぼしてしまう。あの星の様に、今でも夜空に散らばるチリの様に、この世界を滅ぼしてしまう。


 

 僕の魔法は周囲を吹き飛ばした。全ての物を吹き飛ばした。

 国が2つこの世から消えた。僕も家族もろとも全てを綺麗に吹き飛ばした。


 僕も吹き飛んだ、でも破片の直撃を免れ、僕だけ生き残ってしまった。


 あまりの、そのあまりの破壊力に、その爆発力の強さに、破片も消滅したからなのだろう。


 僕だけが生き残った。


 僕は全てを失った。たった一度の過ちで……全てを。



 そしてあれから数年、僕は一人山奥に暮らしている。

 もうあんな事が無い様に、もう兵器として利用されない様に。

 

 再び国が滅びない様に、そして世界が滅びない為に……。


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