⑤(終)

「あ、あれ、見えねぇ」


『鼻写ってるよ。鼻しか見えない』


「鼻?」


『おはな』


「あっ、かめらここにあんのか。なんだこれ逆なのか」


『うん』


「おう。見える見える」


『うん。見えるね』


「泣いてるな」


『うん』


「突然出ていってすまなかった。時間がなかったんだ。マネージャから連絡が」


『きてない』


「あ?」


『きてないよ。マネージャさんから連絡』


「あの野郎。いったいなにをしてるんだ」


『どうしたの、電話なんか』


「いや、そうだな、すまん」


『なんであやまるの』


「これを見てほしくてな。なんとかして山を登ってきたところなんだ」


融けた夜の先へ。


光の、輪。山頂と雲の間から、橙色の閃光。


絶景。


「俺が今まで見てきたなかで、いちばん美しいと思った、輪っかだ」


『きれい』


「結婚しよう」

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