短編まとめ まつおかくん
かたかや
第1話 エイのしっぽ
「えいえいおーっ! エイのしっぽ!!」
「駄目だ駄目だ! エイのしっぽが要らねえ! ノイズになるんだよ!」
監督はおれの笑いに文句があるらしい。
普段は野菜いが笑いのノイズには厳しい。
それは知っているがどうしてもこれは言いたかった。
「お願いします! えいえいおーっエイのしっぽは外せないんです! これがおれの味なんです!!」
「ふざけんじゃねえ! 何にも面白くねえんだよ! そんなにやりたきゃ自分で集客してやりやがれ!!」
エイの友達がいた。十年は連れ添った仲だ。
死んだ。
ブクブクが壊れて死んだ。
ホームセンターに買いに行ったが間に合わなかった。
すぐ死んだ。
「あいつの生きた証を今すぐ残したいんです!!」
「関係ねえよ! そんな辛気臭い話を俺のステージでやろうとすんじゃねえ!」
監督がテーブルをたたく。
「えいえいおーっ! だ。クソみてえな付け足ししてみろ。次からてめえに仕事はねえ」
「……はい」
エイの追悼ギャグは封印された。
芸人の仕事はない。
供給過多。やりたがりの多い業界だ。
なんとかつかんだ仕事から、次の仕事をなんとかつないでいく。
それが芸人の仕事の作り方だ。
そして今日の監督は厳しい監督だ。
もし監督の意にそぐわない芸をしようものなら、次の次の仕事までなくなることは確定だ。
エイの追悼をすることイコール芸人廃業だ。
俺は芸人を続けたい。
だから追悼はやらない。
開演時間が来た。
「えいえいおーっ! エイのしっぽ!!
」
短編まとめ まつおかくん かたかや @katakaya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。短編まとめ まつおかくんの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます