第2話 ガイダンス

そこは6畳くらいの広さの部屋だった。ドアがひとつある。部屋に置いてあるのはベッド、椅子、テーブル、そしてなんだかよくわからない機械があった。ドアを開けてみるとユニットバスにつながっていた。


あれ・・・入り口ないんですけど・・・どうなってますん??


再び機械音声のような声が聞こえてきた。


「参加者が揃うまでお待ちください。お待ちになる間、お休みください。そちらの機械に思念を飛ばしてくださいますと、色々なものが出ますので、ご自由にお取りください」


出るの?では機械音声さんをください!


「申し訳ございません。リストにありません」


優しくするからこっちにおいでよ。


「申し訳ございません。リストにありません」


そんなこと言わずに大切にするからさ〜〜。そこをなんとか!機械音声さんの先っぽだけでもいいから!!


「上に報告させていただきます」


上に報告されてしまったようだ。大丈夫。悪いことはなにもしていない。


では改めまして・・・黒い炭酸飲料をわたしにくださいな。


すると赤いラベルのペットボトルが突然現れた。


わぁお・・・・。ホントに出るんですか。青いタヌキ型ロボットの世界じゃないですよね?


機械の窓のようなもの開けて、手に取ってみる。


キンキンに冷えてますやん!!しかし・・・飲んでいいものだろうか。薬が入ってる危険性はないのだろうか?とりあえず毒という線はないだろう。ハイテク逆身代金拉致詐欺が進化して、ハイテク拉致監禁事件になったはずだ。重要な人質であるオレの命の心配はない。


よくある洗脳の類も心配したところでしょうがないしな。これだけの技術を持っている相手に対して今更じたばたしても最終的に抗う術はない。よし・・・やはりここは神妙にお縄をちょうだいして・・・。


ぷはぁーっ!やっぱり美味しい。これ好きなんだよね。


その後牛丼も食べておいた。ちゃんと思い浮かべた通りの3つのチーズがのってるお店の牛丼がでてきてくれた。わかってるぅぅぅ。意を汲んでくれたのか、はたまた初期でそっちだったのかわからないけど。あとはとりあえずお風呂入って寝よう。


休息は取るべきだ、なにが起きるのかまったくわからないからな。なんで落ち着いてるのって?


例えば数学に例えよう。よくわからないって人結構いたけどさ、なにがわからないのか、わからない。公式でそうなるんだからすいすいっと当てはめればいいだけのこと。公式ってそういうスマホの機能のひとつだって深く考えずに使えばいい。あたりまえのことをあたりまえに使う時、深く考える人いるの?そもそも数字の形だって意味がわからないじゃん?それを言い始めたらきりがないよね。


ということで深く考えてないよ?諦めが肝心な時もある。慌てたところでなんの意味もない。


ワープさせられている時点で抵抗するだけ無駄な状況だ。休める時に休みましょうってことよ。自分にどんな結末が待っているかなんて特に興味はない。とりあえず最善を取りましょう。


はい。おやすみなさい。



「お待たせ致しました。参加者が揃いましたので10分後に、場所を移動しましてガイダンスを始めさせていただきます」


脳内にダイレクトアタックをくらい、すぐに目が覚める。再び機械音声さんの登場だ。どうせならお姉さんの声がよかった。


「お待たせ致しました。参加者が揃いましたので10分後に、場所を移動しましてガイダンスを始めさせていただきます。これでよろしいですか?」


おー!!じゃあ可愛い声で!


・・・


次はセクシーな声で!


・・・


それじゃ次は・・・。



「ただいまより、ガイダンスを開始します」


うん。またもや眩しい・・・。くっ・・・、危ない危ない。サービス精神旺盛なハイテクお姉さんに魅了されかけてしまった。恐るべし・・・ハイの姉御・・・!え?ガイダンス???なに進路相談とかされんの?オレ進学したくないから働きますよハイの姉御!!


そんなこんな考えていたら2度目の奇妙な感覚は消えていた。


今度はどこなのでしょうか?さあ!オレの目よ!開くのだ!開眼っ!!


目を開けてみるとたくさんの人がいた。見渡す限り人だ。だが人と人との間には空間が確保されている。こういうところで人と人が密接してはダメなんだぞ。わかったかい?個人の絶対的聖域は守られているように見える。さすがです!ハイの姉御!!気遣いもできるとは惚れてしまうじゃないか・・・さす姉!


周りを観察してみるとしよう。広さはそうだな・・・東京ドームが4つ分くらい?なのかな?確か収容人数が5.5万人くらいだったはず。


等間隔に空いているスペースがあるとして考えると・・・20万人強といったところか。集めるだけで超大金使っているんですね。国破産するよねそれ。


しっかし・・・がやがやうるさいな。これが暴徒化するというものなのであろうか。人間観察って楽しいよね。帰してと叫んでいる人もいる。


あっ!綺麗なお姉さんいた。


責任者だせと怒り狂ってる人もいる。


あっ!可愛いお姉さんいた。


そもそも参加したいと思ったからここに転移させられているのだろう。ハイの姉御の仕事だ。参加したくないと思った人は転移させられていないのは確かである。自分で決めた意思であろうに。うだうだ言うなんてくだらない。そういうオレも詐欺と決めつけて意思表示したけどな。あれ?すると報酬はどうなるのだろう。


あっ!セクシーなお姉さんいた。


姉御がなんとかするでしょうきっと。できるいい女だからな姉御は。しかし自分で決めたことなのに他人に文句を言うなんて器が小さいのぉ。もっと落ち着けないのかね?


あっ!ロリお姉さんもいた。


しかし子供達は心配だな。報酬入るし母もいるのでなんとかなるだろう。そもそも帰れる方法はないし・・・なるように育ってくれることを期待しよう。パパは出稼ぎに行ってくるね。早めに帰れるようなら帰るからいい子でいるんだよ。


あっ!あの子テレビで見たことある。


「正面のステージの方をご注目ください。5分後ガイダンスを開始致します」


相変わらずのいい声ですね。ハイの姉御。んーー・・・名前呼びにくいな。


H姉御・・・。


H姉・・・。


エチねぇ。


これだ!だいぶ可愛くなった。エチねぇ了解ですよ。


あっ!JKもいた。制服姿もなかなか・・・。


はっ!!ぱないのを見つけてしまった。これは行かねばならない。


ほらっ!みんなステージの方に動きだすんだ!それに乗じて・・・。


ほらっ!誰か動けえええええ!!!


1人がステージの方に走り出していた。器が小さいなんて言ってごめん!君は英雄だGJ!!


追従するかのように人が波のようにステージに向かっていった。


この機を逃すものか!あっ・・・この波に紛れてお姉さんに触れるっていうのも・・・。


くっ・・・いかんいかん。

オレも行くとしよう。あの子のそばへ!!


人の流れが進路を妨げる。


偉大なるモーゼ様!我にご加護を!人の波を突破しよう。これは聖戦だ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る