第10章 リチリア島の戦い編

第1話 フィリーネ、リチリア島へ

※はじめに

いよいよ第10章となりましたが、この章はこれまでのようなアカツキを中心としたお話ではなく、今後の物語にも大きく関わる協商連合の軍人フィリーネ・リヴェットを中心に描いていきます。

アカツキも出てきますが、メインはフィリーネというのをご理解頂ければと思います。

本物語は戦記物ですので、いわゆる群像劇として捉えていただければ。

それでは、引き続きお楽しみくださいませ。



 ・・1・・

8の月6の日

午前7時30分

リチリア島沖

ロンドニウム協商連合海軍先遣艦隊旗艦・装甲巡洋艦『エルラード』の甲板


 アカツキ達二カ国軍第二方面軍が妖魔帝国軍第十四軍集団に圧力をかけるためにシューロウ高地南西にいた頃、妖魔帝国軍第十四軍集団副司令官が司令官代理となってブカレシタ撤退を開始して東方の戦線に変化が現れた頃、イリス法国南部にある本国と南方植民地のある大陸の中間地点に位置するリチリア島西方沖には協商連合海軍先遣艦隊及び陸軍二個師団を乗せた輸送艦隊がいた。

 目的は襲来がほぼ確定しているヴォルティック艦隊と上陸軍に対抗する為。

 本来は法国軍の国土であるのだから法国軍が防衛するべきなのだが、法国軍が旧東方領の戦線に追加で援軍を送った事によりリチリア島へ軍を送れなかった点、アカツキやマーチス侯爵達がラットン中将と話した通りの法国の政治的失態によるスケジュール大幅遅延により海軍では中核を担う協商連合軍は方針を変更。

 協商連合と連合王国の連合艦隊及び上陸軍がリチリアに到着するまでの時間稼ぎとして今リチリア島沖にいる先遣艦隊と陸軍が派遣されたのである。

 先遣艦隊の旗艦は新鋭のエルラード級装甲巡洋艦一番艦『エルラード』。エルラードは装甲が施されており防御力が高い巡洋艦である。アカツキの前世では装甲を増やせば当時の技術的限界により速力が犠牲になるが、この世界では魔法蒸気機関に併せて風魔法増幅機関の推進もあり、速力は時速二十六ナット(地球単位におけるノット)と海軍大国ロンドリウム協商連合に相応しい艦だ。

 先遣艦隊はスピードを求められているのと、勝てる見込みは薄いとはいえヴォルティック艦隊に対抗する戦力は必要な為に、協商連合海軍は攻防速のバランスが取れた本艦を惜しみなく投入した。幾ら三番艦まで就役しているとはいえ、ひいては自国の為であったとしても他国を守る為の戦力としては大胆な判断と言えるだろう。

 その『エルラード』の甲板、見下ろせば海の場所には、協商連合海軍ではなく協商連合陸軍の夏用軍服――上は階級章有りのカッターシャツタイプ、下は紺色のズボンタイプ。男女共用。――を身に纏う女性軍人がいた。

 イリス法国南部の夏は厳しい陽射しで気温も上がるが、時刻はまだ朝であるため過ごしやすい温度である。彼女は視界に入るようになったリチリア島をじぃ、と見つめていた。彼女の階級が高いこともあってか、周りは気を遣って誰も近付こうとしなかった。


 「ったく。どの世界でも政治はクソで尻拭いをさせられるのは私達軍人ってのは、相場なんだろうね。まったく胸糞悪い話だよ」


 女性軍人は性別を鑑みるとやや荒っぽいが、同時に艶やかさも感じる声音で愚痴を呟く。

 女性の容姿は端的に言えば容姿端麗である。体型としてはアカツキの妻であり副官のリイナ・ノースロードと類似点があるが、違う点もいくつか見受けられる。

 まず髪の毛はくすんだ銀髪であり、長さもセミロングだ。瞳の色はこの世界でも珍しい青紫色であった。

 さらに胸部の起伏はリイナが圧倒的であり、この女性軍人はいわゆるスレンダーであった。無論、無いわけでは無いのだが乏しいの部類にあたる。

 最後に武装。リイナは細剣であるが、こちらは細剣のタイプではあるものの一本ではなく二本。いわゆる双剣使い。これが彼女の召還武器である。

 そして、彼女の階級はアカツキと同じ少将であった。


 「特にあの法国のブタ法皇は気に入らない。あれ、私が大嫌いなタイプだし。ていうか、原因作ったのはあのクソ野郎じゃん。他国に尻拭いさせるとか恥ずかしくないのかな。いや、恥ずかしくないから今こうして私達がいるわけか。ほんと世界はどこでもクソッタレだ」


 女性少将の愚痴はいよいよ原因を作った国の首脳への罵倒に変わる。強烈であるが、正論でもあった。何せ、大きな犠牲を強いられるであろう戦場に部下達を引き連れてやってきているのであるのだから。

 彼女の名は、フィリーネ・リヴェット。ラットン中将が言っていたリチリア島派遣の防衛軍二個師団を率いる軍人である。

 そして。


 「ま、自分側が不利な戦いなんて前世で慣れっこだけどさ」


 アカツキと同じ転生者であった。


 「しっかし、転生なんて数十年前の小説みたいな話を私自身が経験するなんて思わなかったよね。しかも産まれた家は前世そっくりで、貴族ではないけれど名家。唯一の違いは軍人輩出が多い家系だから軍人になるのは止められなかったくらいか。何の因果だよってね」


 彼女の転生はアカツキと違い、誕生から遡る。そして、彼女の人生は途中からは悲惨なものであった。

 フィリーネ・リヴェットとして産まれた彼女の前世は、誕生から中学生時代までは幸福に満ちたものだった。日本人の中でもとびきり裕福な家庭に生まれ、優しい家族に囲まれた生活。しかし、中学生時代に両親と兄を喪い失意の中で祖父母に引き取られなんとか持ち直す。それから大学生の中盤までは再び良き人生を歩んでいた。

 だが運命というものは何と残酷なのだろうか。彼女は日本でも大都市に入る部類の街で彼氏とデートの時にテロに遭遇し、彼氏を喪う。弱ければ守れないと考えを大きく変えた彼女は軍人の道を歩んだ。

 一般人であれば開くことは無かったであろう数々の才能を開花させ、若くして中佐にまでなる。特殊部隊を率いるまでになった彼女は、軍人としては華々しかった。

 ところが、またである。この時の日本は腐敗しており、彼女の身の振り方も特異であったのが災いして軍上層部にあらぬ疑いをかけられ、嵌められた結果、とある偽装作戦――真の目的は敵と内通した軍上層部が彼女とその部隊の抹殺を試みた――にて敵集団に捕縛され三日三晩の強姦。最終的には部下に助けられるも、廃人寸前にまでなりしばらくは前線から下がっていた。

 そして、最期はあまりにも悲しいものだった。国内において影の実力者筆頭クラスの祖父共々暗殺されたのである。

 だがしかし。何の手引きなのか彼女は転生した。それが今の彼女、フィリーネ・リヴェットだ。


 「それにしても、転生先の世界は前世のあの頃とそっくりだけど、魔法があるっていうのは面白いよね。すごく、興味深くもあったよ。魔法が使える人間に生まれたのは、運が良かったと思う。それも、超がつくほどのヤツってのが最高」


 この世界は技術水準こそ十九世紀半ばであるが前世と違い魔法が存在している。しかも彼女が転生したのは三十年前。アカツキが戦死した年と彼女が暗殺した年はあまり離れていないのだが、転生年は大きくズレていた。

 当時のこの世界は産業革命を迎えており転生した協商連合は連合王国に次いで成功している国家である。彼女は前世の知識を一部はあえて出さなかったものの問題ない部分は幼少期から出していき、天才として生きていくこととなった。

 産まれた家が名家だったのも幸いであり、また彼女の魔法の才能がその家において史上最高クラスだったのも良かった。

 幼少期に両親を転落事故で喪うという、本来ならば人格に大きく歪みが起きかねず、また前世と同じ展開が起きたが経験済みの彼女にとってはさして影響がなかった。この時もまた祖父母の家に預けられ、なおかつ家系は傍系が存在していた為に跡継ぎだの面倒くさい部分だけ彼女は切り離して、持ち前の才能と前世の知識を活かして大人になり、そして軍人となった。

 何故、どうしてあんなに辛い結末を迎える原因を作った軍人にまたなったのか。


 「今回も軍人として生きていくとはずっと前から決めていた。だって、それしかもう生き方が分かんないんだもの。アホみたいに平和な世界だったけど、妖魔の野郎が戦争が起きてくれて本当に良かったよ。だって、また血と硝煙を味わえるのだからさ。くふふふふ」


 彼女は前世の度重なる、トラウマになるに十分過ぎる出来事によって心が壊れてしまっていたのである。肉親や愛していた人を喪うだけでも辛いのに、軍人として戦った結果嵌められて女性の尊厳も奪われた挙句の暗殺である。壊れるなという方が無理であろう。

 そうした前世人生の結果が、この狂人めいた思考であった。前世と同じく部下は守るつもりであるし、むざむざ死なせるつもりがないが、本人は戦争を、血湧き肉躍る戦いを切に望んでいる。矛盾めいた思考はまさに壊れた人であると言えるだろう。無論、表面上はマトモを装っているが。


 「あーあー、せっかくの苛烈な防衛戦なんだから愉しまなきゃね。沢山殺して、沢山刻んで、そうして……、死にたい。早くあいつの所に逝きたい」


 あいつとは、彼女の前世においてテロで喪った結婚まで決めていた彼の事である。

 彼女は転生当初妖魔帝国を知ってから、いつかは戦争になると信じていた。だが、嬲り殺されるのは趣味ではない。どうせなら前世の総力戦のような悲惨な戦いになって、そこへ身を投じて死にたいと思う、正気を疑うような死にたがりである。

 その為に彼女は軍人になってから才能とコネで改革を推進。ただしアカツキに比べれば緩やかなものであり、しかしアカツキが改革を提示してからは彼を転生者とみて――転生者だからこそ、彼のやり方に確信を得られたのであろう――連合王国と共に戦えるようになれるレベルにまで加速させた。

 それを可能としたのは彼女という存在だけでなく、連合王国に追いつけ追い越せの協商連合だからこそだが、どちらにせよ彼女は自分の発言がすんなり通る地位にまで上り詰めた。そうして今に至るのである。


 「優しい国防大臣は最初反対したけれど、偽の愛国心を見せたら泣き出しそうな顔で頼んだよと言ってきたのはちょっと申し訳なかったかな。でも、早く戦いたいんだから、ごめんね?」


 歪に曲がる口角。誰も見ていない、聞いていないからこそ見せる彼女の真の顔。

 でも、それもひとまずは終わりとなった。後ろから部下である男性軍人が声を掛けてきたからだ。


 「フィリーネ少将閣下。こんな所にいたのてすか」


 「ああ、クリス大佐。ちょっと朝陽を浴びたかったの」


 フィリーネ少将はこれまでの前世での口調てはなくて、この世界でのフィリーネとしての口調で答える。

 現れたのは、フィリーネ少将の副官であるクリス・ブラックフォード大佐。彼女より一回り歳上の四十代初頭の協商連合人によくある金髪の男性だ。紳士的で渋い男性は彼女の好みであるが、意図して選んだ訳ではない。彼はリヴェット家と親交がある家の者で、故にフィリーネ少将を昔から知る顔馴染みであり、同時に兄のような存在なのだ。


 「確かに船の中は少将閣下の普段を考えれば、お世辞にも居心地が良いとは思えないですが」


 「贅沢は言えないわ。わざわざ畑違いの陸軍に司令官が士官室で一番いいとこ手配してくれたのだから。ああそれと、今はまだプライベートだから口調はいつものでも構わないわ。ね、クリス兄様?」


 「…………立場上君が上官なんだ。そこは許してくれよ」


 「えー? 別にいいじゃないの。私とクリス兄様がずっと前からの付き合いだなんて有名じゃない」


 「まあ、な。いつの間にか俺より先に出世してしまったが。君の才能なら当然だと思うけれど」


 「そんなことないわよ。貴方のお陰で私は支えられているのだもの。とっても感謝しているのよ?」


 「だったらその外向けの口調はやめてくれ。背筋がゾワゾワして仕方ない」


 「ひっどーい。そこまで言わなくてもいいじゃないのー」


 「俺からしたら、容姿と口調が合致する外向けより、見かけたとは対象的に少し子供っぽいというか荒っぽいというか掴みづらい喋り方の方が慣れているんだ。俺が今のように話すなら、君もそうしてくれ」


 「はいはい。クリス兄様」


 「はいは一回だろう」


 「はーい」


 クリス大佐はフィリーネが転生者である事を除けば彼女をかなり知る人物だ。だから前世の口調こそが真の口調であるフィリーネに、いつも通りの話し方をするように促した。

 このように、クリス大佐とフィリーネは上官と部下として、兄と妹として心をかなり通わせているのである。最も、フィリーネの爛れた性的概念――原因は前世の三日に及ぶ強姦のせいである――に付き合わされる事もあるのだが。


 「…………それにしても、どうしてこんな任務に自主志願なんてしたんだ?」


 いくらか雑談を交わしてからは無言のまま大きくなりつつあるリチリア島を眺めていた二人だったが、再び口を開いたのはクリス大佐だった。内容は任務に関わることだった。


 「他に代わりがいないから、かな。協商連合陸軍は決して弱くないけれど、あの英雄がいる連合王国ほど陸軍については強くない。島嶼防衛戦に至っては尚更ね」


 「そうではあるが……」


 「なら兄様は他に適任がいると?」


 「……いないな。君の息がかかっている今回の二個師団はあらゆる戦闘を想定して鍛え上げられた精鋭の師団だ。ラットン中将閣下が司令官の五個師団に対して師団単位で言えば練度はこちらが高い。旧東方領への参戦において、ラットン中将閣下と五個師団については決定事項になっていたから君の軍団は遠征とならなかった」


 「そそ。叶うならば私はあっちに行きたかったし、何より英雄クンに会いたかったんだけど決まってるなら仕方なかったの。でも、私達が出る機会が回ってきた。それがこのリチリア島なわけ」


 「ヴォルティック艦隊は恐らく陸軍を相当な数引き連れて襲来してくる。これを法国軍単独で迎え撃つのは不可能で、連合王国軍は割ける余裕はない。となると、俺達協商連合というわけで」


 「その協商連合軍の中で、数的不利でも一ヶ月は島を完全に奪われない持久戦が実現可能なまとまった戦力は私の軍団の二個師団、巷じゃフィリーネ軍団だなんて言われているけれど、私達しかいないわけ」


 「正論ではある。だがなあ、どうして君がという思いもある」


 「愛国心じゃダメ?」


 「普段の言動からして、君に愛国心があるとは思えないんだが……」


 「ひっどーい。――そうねー。論理的に述べるのなら、リチリア島を妖魔共に奪われると私達人類諸国にとって様々な面で大打撃になるから、かな」


 「まあいいさ。長い付き合いの俺ですら、君はどうにも昔から本心が掴めないから諦めている節はある。ただ一つだけ言わせてくれ。死にに行くような無茶はするな」


 「…………善処するよ」


 「その言葉、信じるからな。一度ひとたび持久戦となればどうなるか分からないが、それでもだ」


 「はいはい。ありがとね」


 「どういたしまして、フィリーネ。俺は副官として君に尽くそう」


 クリス大佐は心の底から言うが、フィリーネは内心、前世で死神のような存在の自分にこれ以上近しくしてほしくないと思っていた。どうして私のような人にこんなに優しく、ひたむきに信じて一緒にいてくれるのかとも。だからこそ前世の悪夢にうなされた時、紛らわせる為に頼って体を委ねてしまうのだが、そんな己に自己嫌悪しつつも依存してしまってもいた。

 この会話の後は作戦について少し話していたが、そこへまた一人新たな人物が現れた。今度は陸軍ではなく、海軍の軍服を身にまとった五十路を過ぎているが勇ましさを感じる男性。とはいえ年波には勝てず白髪が混じっている彼は、先遣艦隊の司令官であるコーンウェル海軍少将だった。

 第三者が現れたことによってフィリーネは外向けの顔と口調になり、クリス大佐は引き締めた顔つきで敬礼をする。

 コーンウェル少将は答礼すると、


 「おーう、フィリーネ嬢。眺めてたんなら分かってると思うが、もうじきリチリア島の目的地に着くぜ」


 「あらコーンウェル少将、ごきげんよう。お陰様で、良い体調でリチリアまで来れたわ。今は激戦で失われるだろうリチリア島の美しい様を眺めていたの」


 「そうかい。確かにリチリア島は戦争じゃ無けりゃ長期休暇に体を休めて過ごしたいと思える島だもんな。ところが皮肉な事に、これからあそこは戦場になる。勿論、俺ら協商連合海軍ユニオンネイビーもどうなるか分からねえ」


 「私のワガママに海軍まで付き合わせてごめんなさいね。本来なら、貴方は本国と連合王国の連合艦隊にいたはずなのに」


 「なあに、どっかの信心深さと無駄に高いプライドだけが取り柄の国のせいでフィリーネ嬢も巻き込まれたんだ。お互い様ってやつだろ」


 「まったくだわ。外務大臣の仰る通り、お代は相当高くつくことになるでしょうね」


 「なるべく抑えたい所だが、そうはいかねーだろうな。連合王国のジトゥーミラ・レポートの内容通りなら、な」


 「捕虜にした高級士官から直々に聞いたそうだから、本当でしょうね。きっと、地獄になるわ」


 「地獄は勘弁してえなあ……」


 「あら、コーンウェル少将は地獄のような戦いはお嫌いで?」


 「フィリーネ嬢ほど肝が据わってるモンなんてそうそういねーよ。だがよ、全力は尽くすつもりだぜ。連合艦隊と上陸軍が来てくれるまでの時間は稼いでみせるさ」


 「頼もしいお言葉だわ。私は海軍については詳しくないから、お任せするわね?」


 「おうともよ。ユニオンネイビースピリッツを見せてやるさ」


 コーンウェル少将は協商連合海軍の中でも秀でた司令官で有名であり、好戦的な性格でありその指揮は大胆不敵。性格はこのように荒くれ者であるが、部下への心遣いは忘れず結果として部下からの信頼は非常に厚い。だからこそ艦隊を手と足の如く動かせるという点から今回の先遣艦隊指揮官に抜擢された人物である。

 戦死する可能性も十分ありうる本作戦にも関わらず、彼もまた自主志願した側である。理由はフィリーネと違い人類諸国、つまりは自国を守る愛国心からだった。

 コーンウェル少将は誇りに満ちた表情で言うと、フィリーネは心の中で愛国心の為に命を投げ捨てるものじゃないでしょと、自身の死にたがりな思考とは裏腹に思いつつも、表情は外向きのままで至極真っ当な返答をした。


 「海はコーンウェル少将が、陸は私が。けれど、まずはリチリア島の現状視察からかしらね」


 フィリーネはいよいよ見えてきた目的地の街を見つめながら言う。

 彼女の今度の人生にとっての初となる戦場になる島、リチリア島。上陸したのは昼を過ぎた頃であった。

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