5/7章 終わり
第1/3話 僕たちの無知の贖罪
〈終わり〉
目を開けるとそこは拷問室で、僕は吊るされていた。ここでは抵抗してはならない。
壁を壊すことはできても、僕にはできない。反抗してはいけない。
檻はなく、足はあるけれど、僕には抜け出せない。もし抜け出せるとわかっていても、その方がいいとわかっていても、僕には難しかった。この先へ進んでも変わらない。
しかし僕は今から、この城のどこかにいる、杏のもとへ行かなければならない。
だけど、僕はこのままだ。
僕は目の前の暗闇を見つめていた。
すると、前の方から足音が聞こえきた。
僕は反射的に、息を整え、目をつむり、瞼の中へと引き返す。
………この足音は凛のものか?…なぜ凜の足音が聞こえるのだろうか。テンポが速い。
僕は目を開けた。
僕は動揺した。
仮面をつけ、ランプを手にしたメイドが、目の前にいる。
僕は察した。
あぁ、そういう事か。
僕は脱力した。
母と同じだ。
僕は無力だ。
凜はランプを置き、壁についている鎖のレバーを引いた。
それにつれて、僕の縛られた両腕が、天井に引き込まれていく。
僕はつま先立ちになった。
凜は鞭を手に持った。
僕に近づいてくる。
ぴしゃっ
凜は僕の喉元に鞭を放った。
息が漏れる。
僕の首は裂かれ、血が滴る。凜が手当てしてくれた場所だった。
もう一発、もう一発と、何発もなぶられた。
全身に傷ができ、服は破れ、血が垂れる。
僕は貧血になり、頭がふらつき、意識が薄れた。
しかし僕は、安らいでいた。
僕はマゾではないが、うれしかった。
凜に痛めつけられることが、僕の贖罪になった。
凜、許してくれ。
僕が君を連れてこなければ…。
僕は意識が遠のく中、過去を思い出していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます